一度もみたことがない(来日もしていないのか?)カルロス・アコスタ氏、DVDのロイヤル・バレエの映像化が多いダンサーです。
ベスト・パートナーといわれたタマラ・ロホも引退(というか、昇進移籍)してからずいぶん経ち、もうお年なのでは…、と思っていたら、やはり2016年に引退となり、サヨナラ公演の映像が出ていました。
アコスタ氏は私のとって評価が難しいダンサーであり、でも『カルメン』なら面白そう、と思い、買ってみることに。
前情報をあまり吟味していませんでしたが、『カルメン』はアコスタ氏自身の振付。いろんな意味で、お手並み拝見。
『カルメン』については、実見が2回で、東京バレエ団のアロンソ版(だったと思う)を首藤康之&斉藤ゆかり?ペア、マッツ・エク版を東京バレエ&ギエム&マッシモ・ムッルで観、映像をバシリニコフ&ジジのプティ版で観たことがあります。
最初がバシリニコフ、これはあまり思うことがなかったですが、首藤氏とムッルをみて、何となく、これはホセの物語だな~と思うように。
そこで、まさに「真面目そう」なアコスタ氏はホセに合ってそう…、と思ったのですが。
う~ん、意外と『カルメン』の振付は難しいと思いました。
①ホセの見せ場(感情表現)が少ない。
あまり、アコスタ氏のイキ場面がありません。
これは前情報で、「体力の限界」を本人が感じ始めた…ということもあるのか。
群舞やほかのキャストとのバランスも、何となく世代間ギャップあり。一人だけ、ベテラン臭(年寄臭ではない)も。
引退公演として、少し寂しい。
②ヌニュスのカルメンは、適役か?
ご贔屓ヌニュス様は、ラテン系でもあり、表情も頑張ってうまいんですが…。
ロイヤル・メソッドというものが悪いのか…、なんだか、動作の一つ一つが上品過ぎで、「蓮っ葉カルメン」としての魅力(持ち味)がいまいち感じられない。
意外と、『カルメン』というは演目は『マノン』に似ていると思ったのですが、この際カルメンの内面などを一切考慮せず(「運命」に死を予言されるカルメンのおびえは不要)、ふっとい粗野な生命感を一貫してほしかったなぁ。
③エスカミーリョが…
ベスト・パートナー(らしい)のヌニュスと並ぶと確かにお似合いなんだけど、お互いの値踏みをしあってくっつくいやらしさがなくって、むしろ、ホセ向きなんじゃないかな~、と思う。
④運命の擬人化
どの『カルメン』も、だいたい「死の黒い影」の擬人化である牛役がいます。
今回、はじめて男性ダンサーの「運命」をみたので、最初わくわくしましたが、思ったほど不気味さがない。
おまけ
極端な人格描写がされず割とマイルドに仕上がっているので、かえってリアルな「恋愛あるある」(思いつめるフツーの男・すぐ恋愛感情が覚める女)みたいで…、なんだかなまなましい。
舞台は、(一部、ベジャール版『ボレロ』のパクリ、というか本歌取りと思った場面もあり)歌があったりジプシーの占いがあったりと、ダンスだけでない演出もあって、一見面白いのだけど、やはり、ダンスとしての舞台がみたかった。
そういう意味では☆2つ。
それにしても、『カルメン』だけは、原作を読んでも面白くなさそうだけど…。