pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

『鶴』

テンション下がって、無難な話題から。

冬は雪のため峠越え(越後湯沢あたり)ができず、武蔵の国行きが困難、ダンスはローシーズン。
ほんとうは現代モノが面白そうなハイシーズンなんですが。

雪解けを期して行ったのが、首藤康之主演ウィル・タケット振付の『鶴』。
なぜか『エオンナガタ』以来、外国人によるジャパネスクが続きますが、今回もだいたい予想できる通り、「鶴の恩返し」がモチーフ。

文学がテーマなので語り手がいましたが、この方があまりうまくなかった。
舞台装置がスクリーンと障子(日本的家屋の演出)を兼ねていて、影絵のような演出もあり、これはなかなか面白い。
パペットの鶴は、操り手のダンサーの動き、自在のような巧みなつくり込みがよかったけれど、初めて影から実体化したのをみたときはいささか残念。照明が悪かったのかな…(ちょっと、みえすぎ感あり)。
ただ、慣れてくると非常によくできている。
一体のパペットを複数のダンサーが操るのですが、団体表現(?)もなかなかのもの。

どうも「夕鶴」のイメージがあったせいか、主役の男(独身)と不意にやってきた嫁(鶴)の物語かと思ったら、妻がいた(笑)。
昔話の「鶴の恩返し」は、老夫婦が登場するバージョンが多いらしいですね。
二人いるのに、貧しくてかえって孤独感が募る、という感じが切実に表現されていました。

10月はゴシックな装いが似合っていた首藤氏、日本的なマタギ(※漁師役らしいが)のような、荒々しい百姓の格好もまた、似合いますね(笑)。
欲をいえば、この人の場合、常にいい人にみえるので残念。本来的には、人間の愛と欲がテーマのはず。

「鶴~」といえばはた織りは有名なモチーフですが、テキスタイルが実に美しい。
舞台装置としての布が残念なものだったらほんとうに残念な舞台になったかもしれませんが…、いいな~と思ったら、ワダエミが衣装担当だった。
日本的な要素をうまく抽象化させた舞台衣装をデザインさせたら、この人はほんとうにうまい。
以前、『幽霊はここにいる』という安部公房の舞台をみいたことがあり、これも衣装がワダエミで、とてもおもしろかったデス。

今回もそれほど期待していなかったのですが、「エオン~」同様、現代的な物語バレエで、文学モチーフ、舞台装置、衣装、ダンス、音楽がすべて調和しており、総合芸術はよいな~と、しみじみ感じ入りました。
ソネット」の感想でも書いたけど、首藤氏はソロのほうがおもしろい活動ができてますね。
ギエムもそうだけど、振付家とダンサーの共作がおもしろいと思う今日この頃。
どうぞ頑張ってくださいまし。