前回はコロナ禍幕開けだったオペラ座来日公演。
4年ぶりで観てきました。
「マノン」は10年ほど前にABTで実見したことがあり、また映像としてはデュポン様のDVDがあります。
なので、ヌレエフ版の「白鳥」と迷ったのですが、この数年の間にエトワールが全く知らない顔ぶれになっていたこともあり、これまた「白鳥」もソフト化されているホセ・マルティネズ&カール・パケットを超えることも期待できず、結局マノンを選びました。
ユーゴ・マルシャン&ドロテで観たかったところですが、休みの関係で、ミリアム&マチューペアに。
ミリアムは、全然知らない人ですが、今年アデュー公演があるベテランだった。
し、個人的には前回のマチューの件もあり、マチューはスターではあるけど、私にとってはある種賭け。
それにしても、円安・物価高直撃、チケットは3万弱だし、プログラムはあの内容の薄さで2500円もする…
ロシアのバレエ団もしばらく観られないでしょうから、海外ものはこの先…難ですね。
さて。
「マノン」を選んだのは、どちらかというとこちらの方がゴージャスだから‥と思ったからなのですが…、うーん、どうなんだろう。
前回ABTはびわこホールだったのですが、東京文化会館は狭いのか?
1幕の馬車待合のシーン、なんだか狭苦しくて、ダンスがよく見えなかった。
し、デグリューがいつからいたのか、全然わかりませんでした。
マノンとの出会い(ぶつかる)が全然運命的に見えず。
この幕のマチューは、ちょっと足がガクガクしてて、やっぱりあまり上手くないのでは…と思いましたが、その後はブレがあまり気にならず、それなりに(何様?)キャラクターがわかるようになりました。
やはり、私との相性があまり良くないのか…?
ミリアムはどちらかというと可憐なタイプで、ジュリエットとかがあいそう。
16歳の、世間知らずで天真爛漫なマノンには合っているように思いますが、2幕は愛人としての変貌、ゴージャス感が今ひとつ。
たくさんの男たちに囲まれる、ファム・ファタル的な、ダイブっぽいリフトが見せ場だと思いますが、今ひとつ凄みが感じられず。
これも初見ジュリー・ケント(パートナーはボッレ)、デュポン様が圧巻すぎなので…。
マダムに好みの女の子を所望する紳士陣の描写について、高齢(杖をついている)男性が「ボン・キュッ・ボン」を所望するという描写が戯画的なのが定番と思っていたのですが、この男性の身体不具性を強調する振りがなかったのは、時代なのか。
それにしても、背景の人々がやや平面的で(やはり舞台が狭いのか?)、オペラ座の将来がやや不安。
マノンの酔っ払いダンスもABTでは超絶技巧を感じたものですが、今回は踊りの合間のマイムでかろうじて酔っ払ってるのがわかる、という具合で、感動はなく、愛人も、ドレスの色が違うだけで他の踊り子との見分けがつかないくらい。蓮っ葉のリーダー感がやや乏しい。
「マノン」を見るといつも(原作を読んでも同様)、マノンという人物像がわからなくなるのですが、今回もどちらかというとそんな感じ。
ミリアムは可憐な少女性があるマノン、ではあるけれど、未熟ゆえの浅はかさよりのマノンでもなく、終始いい子にみえました…。
今回はどちらかというと、「デグリューの物語」にみえる(というかいつもか)『マノン』だと思いました。
1幕では不安に思ったマチューも、2幕以降はキャラがわかるように。
童貞(ではないかもしれないけど笑)らしく、独占欲強い、でもマノンが窮地だと愛情深く見えうる、リアルな「恋する男性」像。現代のモラハラ男みたいけど(笑)、そこがリアル所以かしら。
マチューの感情表現は、ちょっと直情的傾向があって怖いタイプだなーと、前回のオネーギン同様に感じました。
前回来日はデュポン様が芸術監督就任直後、今回はマルティネズ氏就任直後。
(客席にご本人がいました。すっかりイケオジに)
私的黄金期のエトワールが運営陣にいるという時代になったように思いますが、20世紀の偉大なるコレオグラファーたちが相次いで逝去した今、オペラ座も(元々かもしれませんが)保守化している感があります。
伝統を継ぎつつ、伝統を刷新して欲しいと思う今日この頃です。