pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

白鳥みて比べ⑤

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あけましておめでとうございます。
なんだかファッション記事が薄くなっていますが、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 
さて。
結局年末年始は思ったほどDVDを観られませんでしたが。
昨年末から盛り上がった白鳥は何とかラストDVDに到達。
 
ブルーレイもいいけれど、少し古い廉価版がお安く出ているので、Amazonをみているとつい欲しくなるわ…。
恐るべしAmazon
次は『バヤデール』へ食指が…。
 
再び、それはさておいて。
白鳥を選んでいた時に、廉価版のオペラ座DVDで1992年のブルメイステル版があって、主演がマリ=クロード・ピエトラガラだったので買ってみることにしました。
 
私がバレエを観はじめたころにはすでにオペラ座を引退していて、だけどまだまだ注目のダンサーだったピエトラ姐さん。
2002年にモダン・ソロ公演で来日することを知り、頑張って上京しましたが、なんと練習中のけがで公演中止に。
ついに観ることができなかったお方。
 
このDVDのキャストはものすごく豪華で、王子はパトリック・デュポン、ソロにまだエトワールではなかった頃の二コラ・ル・リッシュ(若い)、ウィルフリード・ロモリ(この人はあまり変わらない…)、アニエス・ルテステュ、デルフィーヌ・ムッサン、クレールマリー・オスタなども登場。
 
演じる人によってはもっさりしてるなー、と思ってしまうブルメイステル版ですが、豪華キャストはもちろん、さすがオペラ座
王道でもあると同時に前衛もいとわず、常に現代的であるのがおフランスなのか。
舞台全体がすっきり整理されており、なによりも今回が舞台装置と衣装がとても近未来的。
フューチャリスティックとなるとなぜかアールデコ風にもみえますが。
当時、オペラ座バスティーユ劇場ができたばかりだったそうで、映像には近代的な劇場の客席も冒頭に映し出されています。
どちらかというとガルニエ宮のほうが盛り上がるのが日本人の私ですが(近代的な建築は別に日本でもふつうにあるし)、そうした新しい劇場誕生にウキウキした当時のパリ人の、それに合わせた演出だったのかもしれません。
衣装デザインは毛利臣男という日本人で、ヌレエフ版のオペラ座による『シンデレラ』の森英恵もそうなんだけど、日本人デザイナーが入ると着物スリーブや歌舞伎メイクが必ず入りますねぇ。
 
さて。ブルメイステル盤なので、冒頭オディットが白鳥となるエピソードが入ります。
ダンサーをアップで映すという演出色の濃いカメラワークですが、ピエトラ姐さん、わりと顔のしっかりしている方(コルシカ系)なので、あんまり可憐なオディットの感じが…、しません。
そして、はや着替えの技に驚き。
ザハロワの映像では替え玉かなぁ…、と思ったものですが、どうやって着替えているんだろう。
 
デュポンのジークフリートは、やはり先日のマルティネズ氏同様、最初は老けた王子(たぶん、髪型のせい)だなあ、という印象でした。
でも全幕を観終わった時、今回の王子はあまり最初から憂愁に沈んでいるタイプではなくて、何一つ不自由なく成人した王子が、突然恋魔法にかかって苦しみ、たぶらかされ、失意(でも、ブルメイステル盤なので最後はハッピーエンド)。という描かれ方なんだなぁ、というふうに思うようになりました。
恋するハラハラ、ドキドキ感はデュポン氏によってとてもよく演じられています。
 
で、ピエトラ姐さんですが、思ったとおり、可憐なオディットというよりは白鳥の妖精のような、ちょっと人間味のない感じのオディットとして登場。
でもとにかく、オディットの動きは柔らかく素敵。
そして王子も、かわいい子に惚れる、というよりは妖精に魂を抜かれたように惹かれていくという様子がすごくよくわかる。
デュポン氏の女優(俳優?)魂にカンパイ。
 
この「小さい白鳥」の踊りには、この少し前に資生堂のCMで知られるようになったミテキ・クドーが出ています。
ときどきキャラクターを踊る映像が残っているひとで、エトワールになれなかったようですが、オペラ座のダンサーらしいいいダンサーだなぁ、と思うのですが。
 
前半は道化師のモヒカンくらいの飛ばしようだった舞台衣装(&化粧)は後半からブレイク。
とくに、ロットバルトご一行の派手さと前衛具合といったら…。
それでも嫌味にならないのがパリ・オペラ座のすごさですが。
 
2回観てようやく分かったのですが、ブルメイステル版ではキャラクターダンス(各民族の踊り)は悪の手先、という位置づけのようですね。
ロットバルトとともに登場するスペインの踊りは、どの版ももっともアクの強い踊りではありますが、衣装が…すごい。
金×黒で、他の民族もそうだけど、女性たちが坊主だったりモヒカンだったり、やりたい放題。
そして歌舞伎メイク。いやはや、もう絶対悪でしょう。
民族ダンスの間を縫って、オディールがちらちら顔を出しますが、そのたびに王子はハラハラと飛び出そうとして、みんな(女王)に不審がられる様が面白い。
 
そして、オディール。
タイプ的に、ピエトラ姐さんもオディールの時のほうが表情豊かなんですけど、ただキレキレのダンスを踊るわけではなくて、オディットとは違う、女のもう一つの側面を踊りわけて表現しているのがよくわかる感じでした。
たとえオディットと違うとわかっていても、男なら惚れてしまいそう。
 
他の『白鳥』では、ロットバルトが女王にとりいっていたり、女王がオディールを気に入っていたりすることがありますが、ここでは女王は終始ものすごく不審な面持ちで、道化師にいたってはすごくおびえている。
こんなのは初めてみるような気がしますが、そりゃそうだろうよ、と妙に納得。
とにかく王子だけがメロメロで、「母さん、この人に決めたよ!」といっても、二人に全然受け容れられない様子がものすごく笑える。
で、うっかり愛を誓ってしまい、オディットの白鳥化は永遠に。
泣いて失望しても、女王は全然同情しないし、気絶もしない。
愛に狂った?王子だけが一人飛び出していき、終幕を迎えます。
 
ちなみに、二人のパドゥドゥのシーンなどでは、この舞台で復刻された音楽がいくつか採用されているらしく、確かにあまり聴いたことのない演奏が挿入されています。
 
さて、終幕。
オディールを観た後にオディットを観ると、やはりその踊りわけがすごいな~、と思います。
オペラ座の2つの舞台を観て、私のオディット観を変えないとなぁ、という気にもなりました。
アニエス・ルテステュもピエトラ姐さんも、こびないフランス女なのかもしれませんが、弱々しく可憐なオディット観にアデュー。
オディットは妖精なんでしょうよ。
王子に出会い、オディットも変わって、少しずつ感情が出てくる、のかなぁ…。
 
そしてラスト。
ブルメイステル版だから、最後はハッピーエンドなのはわかっていても、終わりはなんだか不穏。
王子は闘わないし、気づいたらどうやら湖の中でおぼれている。
一瞬、最後だけはヌレエフ版なのか?と思いましたが、気づいたら人間の姫に戻ったオディットが王子の隣に。
いつ、二人が、悪魔を打ち倒すような強い愛をみせたっけ?と思ったら、解説を読むと、どうやら王子を救うためにオディットが湖に身を投げていたようで、その強い愛に悪魔は打倒されていたらしい。
 
…なんだ、結局女の情に助けられているじゃん…
 
と、最後は少々白けてしまうブルメイステル版ですが。
いつも書いていることですが、全幕としてはとてもすばらしい。
何回観ても、白鳥百様を再認識。