私的、20世紀後半期最後の偉大なコレオグラファー・ノイマイヤーがついに引退するそうです。
ベジャール、ピナに続き、私が目撃できたコレオグラファーの時代がまた終わり、ついに浦島タロこの時代が到来…。
というわけで、3月のサヨナラ公演は早々に観る予定だったのですが、演目が「シルヴィア」と、少々「?」なところ。
「ジゼル」などと並ぶクラシック版の方は見たことはなく、ストーリー自体もあまり見どころなさそう・・・、ということで、さよなら演目でなければきっと見なかったであろう。
あらすじがわからないとなんなので、最初にプログラムを買いましたが、やはり盛り上がりに欠ける。
まあ、ノイマイヤーさんがなんとかしてくれるだろう…と思いましたが、生オケにも関わらず、とっても眠くてしんどい 2時間でした。
ノイマイヤーも全て完璧、とは思わない昨今なんですが、ふと、最初にノイマイヤーを実見した「眠りの森の美女」ノイマイヤー版と似た印象だなあ、と思う。
オリジナルのシルヴィアの方もなんだか起伏がない演出のようで、それを整理して筋を通したのがノイマイヤー版、との解説でしたが、どうなんだろう。
なんとなく、11月に見たマイヨーとおんなじ感じで、やはり現代化に限界のあるクラシック演目というのもあるのでしょう。
現代あまり上演されない全幕もののモダナイズ上演は、要注意かも。
主人公のシルヴィアを演じた菅井円加さんは、とにかく最初のワイルド感がものすごく、ほんまに「愛を知って変わる」のか最初かなり疑問に感じるほど。
しかし、「アモール」後があまり意思が感じられない、一体どういう女性なのか全くわからない感じになり(去勢された木偶の棒感がすごい)、これはダンサーの力なのか、演出のせいなのか、すごく疑問に残った次第。
(この辺も、マイヨーのじゃじゃ馬ならしと似た印象)
そこで、元々はパリ・オペラ座のために振り付けられたということで、オペラ座の「シルヴィア」DVDを中古で買いました。
廃盤&需要見込み?で値段が上がっていましたが、ジャケットの状態が悪いという激安ディスクを発掘できたので、鑑賞。
シルヴィアがオードリー・デュポン様、アミンタがルグリ先生、ディアナがマリ=アニエス・ジロー姐さん、アモールがニコラ・ル・リシュ(呼び捨て)、エンディミオンがホセ・マルティネズ氏という、信じられないほど豪華なキャスティングです。
ビバ、2000年代のオペラ座。
とにかくとても見目うるわしい人々の映像なので、目のやり場に困ってしまう(?)くらい。
デュポン様は、狩猟女時代のワイルド感は少々控えめですが、ジロー姐さんと並んだ時の美しきアスリート感がすごい。
画像で見ると、舞台より接近した視点になりますが、結構複雑なリフトが組まれていますが、みんな難なく優雅にやってのけるから、さすが。
アモールはお茶目度がル・リシュの愛敬ある顔に合っているし、誘惑者としてイケメンに変貌する切替もさすが…。
ひたすら眠る青年役のマルティネズ氏も、流石にこういう繊細な表現が本当にうまい。本当に、眠ってますよね(笑)。
ルグリ先生だけが、残念ながらキャスティングがちょっと合ってないのでは…という感じ。もう少し、世間知らずの若者然とした配役の方が良かったと思います。
しかしまあ、デュポン様をもってしても、やっぱり後半のシルヴィアが「何を考ええているかわからない女」から脱することができないような気がしました。
つまり、私的にはノイマイヤー版「シルヴィア」はあまり面白くない演目、ということかしら。
あまり深掘りする意味はなさそうだけど、消化不良解消のため、よりクラシカルに近いアシュトン版と見比べることに。すっきりすると、いいですね…。