10年ほど前、いろいろバレエソフトを漁っていた時から知っていたタイトルではありますが、当時はあまり資料がなくて、スルーしていた「マルコ・スパーダ」。
現役最注目?のマカール君が踊っている動画をチラ見したので、俄然興味が上がり。
いっときはボリショイ=グリゴローヴィッチによるボルシェヴィキ的前衛しか興味がなかったけれど、最近はこういう、日本ではあまりお目にかかれない、重厚なボリショイ的グランバレエも面白いと思うように。
今でもなんとかソフトで入手できそうでしたが、興味の具合もあり、AMAZ⚪︎Nプライムで視聴分を買う。便利な時代になったものだ。
主役のホールバーグ他、セミョーン・チュージンやオブラスツォーワ、オリガ・スルミノワなど、2010年代のボリショイのスターたちが目白押し。
日本公演ではどうにも3人目以降の主要キャラ・キャスティングがセーブ気味になるために味わえない、プリンシパルを惜しみなく使う本国舞台でのキャスティングの妙が楽しめます。
古い演目の再興かと思っていたら、それほどではなくて、19世紀には遡れるけれど、20世紀にラコットが改訂、本映像が上演された頃にボリショイのために再度振り付けた作品だそうです。
ラコットも前世紀の方と思っていたら、最近亡くなったそうで…。
ラコット版もローマの劇場のための振り付けらしく、舞台はローマ。高めですが、初演映像はヌレエフ主演が手に入るようです(欲しい)。
一応粗筋を読んでから舞台を見るものの、最初登場人物とそれぞれの立ち位置を見分けるのに苦労する。
主役然とスルミノワが登場するので混乱しますが、この知事の娘と娘に横恋慕?する竜騎隊長、親子が縁談を望む貴公子チュージンが説明もそこそこに登場。
このカップルでパドドゥが入り、ホールバーグの顔をぼんやりとしか覚えていなかったために混乱しましたが、少し遅れてようやく、マルコが登場。した瞬間、思い出す。
ホールバーグはABTの日本公演でオシポワとのペアで実見したことがあるはずなのですが、パートナー同様、全然記憶にない。
マルコは貴族を装う盗賊のカシラなので、悪い輩なのですが、品を保ちつつ悪いツラを見せるところをホールバーグは上手く演じています。
そして、マルコ自身は色恋の主人公ではなく、どちらかというと親子関係がキモとなるお話で、まだうら若い(30代)ホールバーグとの親子って…と思うところ、娘のアンジェラ役・オブラスツォーワはほぼ同世代にもかかわらず、令嬢のこなれ感を巧みに表現するスルミノワ(たぶん、スルミノワの方が若く20代?)と対照的に純真無垢さ炸裂、配役の妙で目に入れても痛くないと言わんばかりの娘溺愛ぶりが絶妙に表現されていました。
父の本業を知らない娘は貴公子チュージンと相思相愛、マルコパパも娘が幸せな結婚ができれば、と思っているようですが、ふとしたことで父親の正体を知り、貴公子からの結婚の申し込みを断る娘。
貴公子は腹いせ?に政略結婚を受け入れ、喜ぶ知事親子。決定的な失恋を嘆き悲しむ竜騎隊長。パパっ子として、貴族としての結婚を諦め盗賊の娘として生きようとするアンジェラ。それはそれで娘の将来を案じるマルコ、という人間模様が次々描かれていき、最後は盗賊討伐隊の前に倒れるマルコが、「自分の実の娘ではない」と嘘をつくことで娘の結婚を叶える、というところで幕が降ります。
物語は文章にするとなんだかなー、という感じですが、演者が揃えば、舞台としてはおもしろい。これがまあ、グランバレエの醍醐味といったところ。
ちなみに、ボールバーグはアメリカ人初のボリショイのプリンシパル、「貴公子」チュージンもボリショイアカデミーの外からの入団、オブラスツォーワもマリインスキーからの転籍、と、当時のボリショイの流動的な人事は、今思えば、セルゲイ・フィーリン芸術監督時代の活性化新機軸だったんですかね。
その後、有名な硫酸襲撃事件、現在ワガノワアカデミー校長のニコ氏との確執などがあったという噂の真偽はわかりませんが、「今のボリショイのプリンシパルの高齢化」を嘆く20代の某若僧に対する一つの回答として、フィーリン手腕の頓挫とこれらの禍根なのかな、とも思ったりする、2010年代黄金時代の貴重映像。




