pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

『マノン』見て比べ。

消費税UP前の駆け込み消費中。
CDやらDVDやらもあれやこれやと。
 
そんなわけで、先日のABT『マノン』を検証するために?、本家ロイヤルバレエのDVDを買いました。
タマラ・ロホとカルロス・アコスタの2008年コヴェント・ガーデン版です。
 
↑元祖的なアンソニー・ダウエル主演のをすでに持っていたのですが、ダウエル氏は何というか…、クラシックな感じ(古臭いイメージ)があるので、あまり観る気になれず…。
 
割と有名なプリンシパル・ペアですが、いまだ実見したことはなし。DVDも初見です。
アコスタ氏はロイヤル初のアフリカ系(本人はキューバ出身)プリンシパル
なので、偏見ではないけど、18世紀フランスが舞台のデ・グリュー役は違和感があるのでは…と、少々思います。
肌の黒い人が(しかも、姿勢がきれい)あのフリルの衣装を着ると、かえってコロニアル時代のお仕着せみたいに見えるから、なんだかなぁ。
 
マクミラン版はすべて原作に忠実なわけではありませんが、原作ではデ・グリューは神学を終了したばかりの17歳。
アコスタはちょっと、大人っぽくみえる。
DVDはすべてアップでみえるため、ABTの舞台よりも演技に注目がいきました。
そこから考えると、アコスタ演じるデ・グリューは、ボッレよりずっと真面目で誠実そうだな~、と思われました。
(細かい表情がとてもよくみえる。トランプのイカサマにも臨場感が)
ロホとの相性も抜群。
 
原作のデ・グリューはとてもいけ好かないヤツ(イノセントな悪者)なので、読んだばかりの今はちょっと素直に同情できませんが、先に偏見がいろいろ渦巻いたりしたけれど↑、結果としてアコスタのデ・グリューはいいなぁ。
とても丁寧できれいに踊るダンサーなので、偏見で目の曇らないモダン演目でもみてみたい。
 
さて、ロホですが(ちなみに、今回なぜかスペイン系の名前のダンサーが多いなぁ)。
やはり原作のマノンとは違うのですが、マクミランの描く「マノン」像に近いのはジュリー・ケントよりロホなのかなぁ、とも思う。
GMの愛人以前・以後もタイプは違っても、コケティッシュなのはABTとの印象が随分かわります。
若々しいコケットなマノン、富豪の愛人たる堂々とした女っぷりをみせるマノン。ロホのマノンなら「ファム・ファタル」といわれても納得。
(ロホもアコスタ同様、最初はちょっと大人っぽすぎる。修道院にはいるため送られてきた原作のマノンは16歳くらい)
これもまた、アップ映像ならではの感想かもしれませんが…。
 
話はそれますが、ロホは『椿姫』とかが似合いそう。手練れだけど高潔、というのが似合いそう。
 
しかし改めてみて、マクミランの振り付けはテクニックを要するのだなぁ、と思いました。
ロホは今まであまり意識したことがありませんでしたが、超絶技巧。
複数の男性にリフトされるシーンも多く、動きも複雑ですが、わりとみんな難なく踊りつないでいます。
 
ちなみに、今回は先日の舞台観劇とはどうしても違い、「原作との違い」が気になってしまったのですが。
レスコーはどんなタイプがいいのかますますわからなくなってしまいました。
(原作のレスコーは先日の想像より悪い奴でもなく、何となくベルばらのド・ラモット大尉みたいな感じだった)
原作では、身を持ち崩した女性に対する伝統的な?態度をとる男性で、容易に家族愛を想像したがる現代人とには想像しがたい、因襲的な道徳概念というか、時代を感じさせる描写になっています。
 
そしてアメリカ。
原作には言い寄る看守は登場しなくて、このエピソードは、当時大陸へ送られた女囚人は現地の植民男子に配偶させられていたらしく、その変奏バージョン。
この辺のいざこざがマノンとデ・グリューの荒野逃亡の原因になっているのですが、恐ろしい時代だ…。
 
ムッシュGMは原作ではもっとおじいさん(※中年の息子が後ほど恋敵として登場している)ですが、ロイヤル版のGMはいい演者だったなぁ。
あ、これもアップ効果か。
 
↑なかなか雑念の多い鑑賞録ですが、とまれ、マクミランはやはりみごたえありまする。
個人的には2幕の娼館のシーンがヴァラエティに富んで好きですねぇ。