白鳥みて比べ④
悲劇バージョンの白鳥を見比べるために、ヌレエフ版を鑑賞。
古いけど名作、ヌレエフ自身がマーゴと踊っているのでもよかったけれど、どうせなら新世代を、ということで、2006年のオペラ座BDを買いました´д` ;
フランスのバレエ団がわざわざロシア的演目をやらなくていいのに、という気もしますが、1980年代にヌレエフがパリ・オペラ座の芸術監督をしていたこともあって、いまもヌレエフの振付がレパートリーにあるのはここくらい。
そして、近年はヌレエフ時代のエトワールたちがほぼ全員引退してしまったので、この先みることがなくなる…かも´д` ;。
全部みたわけではないけれど、ヌレエフが再解釈したロシアの古典演目は、19世紀的バカバカしさが払拭されていて、主人公の内面の表現に優れており、また舞踊主体表現(とくに男子のリフターからの解放)が、現代にはより感情移入しやすいように思います。
さて、冒頭。ブルメイステル版のようにプロローグ付。
人間の娘・オディットが白鳥にされる悪夢を王子がみてうなされているシーンで幕開けます。
すっかりベテランの貫禄のあるホセ・マルティネス(現在は引退してスペイン国立バレエ団の監督)ではちょっと苦悩が深すぎる感じですが´д` ;
しかしいきなり、ロットバルトがかっこいい。
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
夜の闇の象徴・梟をアレンジしたデザインの多いロットバルトは、ともするとただのバケモノ。
しかしさすがおフランス、夜の帳の疑人化のような劇的な登場に思わずドキドキ。
観客(私)の心は一気に舞台へともっていかれましたよ´д` ;。
誕生日→成人→騎士叙任→青春の別れと憂愁、というように、白鳥で描かれる(べき)ジークフリートとしては、マルティネスは成熟し過ぎ(すでに人生の苦悩を知っていそう)な感じで、未知の未来への不安に怯える青臭王子にはみえないんだけど、終始憂愁に駆られているのはよく伝わってきます。そして、王子の憂愁こそヌレエフ版の特徴。踊りもとてもキレイ。
王子の友人たちのコールドとの格の違いが歴然とし過ぎでバランスが悪いですが、背景として、王子だけが浮かび上がるようにみえるとすればそれはそれで効果的なのか。
そして、同じくらい存在感を示すのが家庭教師。
あれ?と思ったら、ロットバルトと同じダンサーが演じており、どういう意味か、いろいろと脳裏をかすめます。
他の版でも家庭教師が登場することはあり、どちらかというと道化的(道化師も別にいることも)な役回りが多いのですが、ロットバルトと同一人物というだけですでに充分妖しい。
し、ここで演じているカール・パケットの美貌と立ち振る舞いといったら!
バンパイヤみたいなんですよ~。
マルティネスより若手でもけっこうベテランで、日本にも何回か来てるみたいなのに…、ノーマークでした。
しかし、以前みたヌレエフのDVDでは家庭教師の介在が記憶にない…´д` ;
ある意味、昼も夜も密かに、ままならぬ運命に支配されているジークフリート、というところでしょうか。
そして、話飛んでオディットの登場。
昨シーズン引退したアニエス・ルステュスは、実はあまり好きではない。
上手いんだけど、感情移入ができないタイプなの。
他の方のコメントにあったけど、ルステュスのオディットは、確かにちょっと機嫌が悪いようにみえます。
まあ、今回は上手いから帳消し。
ただ、ここでもコールドとの格の差があり過ぎて、姫というよりはすでに女王のような堂々たる風格。
そして、誰であれ、王子はすでにうれしそう。
表情がないのを差っぴいても、やはりこのカップルの相性が抜群に良いのは確かで、ペアの踊りとしてはとても素晴らしい。
そしてやはり、ヌレエフ版はダンスでの演出に徹しているのは面白いなぁ、と思います。
さて、二幕。
民族の踊りは悪魔の手先でもなく、花嫁候補でもないかたちで登場。
さらりと流して、ロットバルト&オディールが登場。
ロットバルトは全然梟の面影なく、一幕の家庭教師と同じ素顔で出てきます。
どういう意味だろう´д` ;。
そしてオディールは、思ったよりギラギラせず、ある意味一本調子か。
まあ、素のままで十分大人の魅力に溢れてますか´д` ;
なんというか、ルステュスは虚無的な憂い顔なのよね。アップのある映像では、それが印象を左右してしまうようで、残念。
長身とは思っていたけれど、177センチもあるとは今回初めて知りました。
ギエムといい、マリ=アニエス・ジローといい、フランス人なのにオペラ座のエトワールは長身が多いね´д` ;。
ところで、梟の長マントを着ている昼のロットバルトは、重いからか踊らないことが多いのですが、今回はソロパートあり。マントはちゃんと脱いでました。
話逸れましたか、ロットバルトに唆されてうっかりオディールに永遠の愛を誓ってしまうジークフリート。
ロットバルト親子は高笑いして去って行き、真実に気付いた王子は本当に悲しそう。
いや~、こんなに悲しそうなジークフリートは初めてみたわ´д` ;
最後の幕、やはり二人の踊りが素晴らしい。
王子は戦わない分だけ、やはりダメなものはダメ、ままならぬ運命というものに支配される人間の姿を示すように、ヌレエフ版は終わります。
永遠に白鳥の姿となったオディットはロットバルトの腕に絡めとられ、空に消えていく。
気を失うように王子は倒れ、それは王子のみる悪夢のシーンにかわり、冒頭と繋がって終幕。
や~、うまくできてます。
今更白鳥、ではありましたが、解釈次第でいくらでも現代でも楽しめることが判明。
いろいろ書きましたが、よい舞台だったと思います。
オペラ座、みたいなぁ´д` ;