先般、ブルメイステルの「白鳥」を見直した盛り上がりで、同じオペラ座の名盤、ヌレエフ版のマルティネズ&ルテステュ公演を観よう!と思ったら、BDが破損していて、2幕がみれない有様に。
ワタクシ的永久保存版につき、廃盤になったら嫌だー、と思い、中古で買い直して無事鑑賞。
1回目でみた時よりホセ氏やアニエスさんへの偏見が薄くなり、カール・パケット様と合わせ、素晴らしきワンダースリー。
思い返せばかなり人物の内面が抽象化された振りで、現代のスワン・レイクとしてはとても興味深いです。詳しくは、過去のブログで。
ちなみに、購入したソフトは日本販売向け製品だったらしく、日本語解説もついており、前回なんとなくそうだろう、と思っていたことが明確になりました。まさに怪我の功名。
さて。
同じショップでニーナ・アナニアシヴィリの「白鳥」DVDが販売されていたので、ついでに購入してみました。
以前書いた事がありますが、フェリ、ギエムらに並んで20世紀末の名プリマとして名高いニーナさんですが、個人的に芸風があまり合わないようで、感銘を受けたことはありません。
現役晩年?にダイジェスト版のニーナの「白鳥」舞台を実見した事はあるのですが、ニーナには確かオディールの回転技の伝説があったよな…、と思い、みてみることに。
ジークフリートはニーナとのペアでも有名なファジェーチフ(私的には、某ギャグ漫画のせいでこの人はオッサンにしかみえない…)ですが、ボリショイではなく、ペルミというロシアの地方都市バレエ団で客演した映像のようです。
クレジットには1992年とあるから、ソ連が崩壊して間も無く、ニーナさん20歳そこそこですかね。
振付もこのバレエ団の人か、あまり聞いたことのない名前がクレジットにあり、みた後の印象としては、散々悪く書いたマリインスキーものに近い感じ。なんというか、ソヴィエト伝統墨守型、といいますか。
先のヌレエフ版を見た直後に見たので、その古臭さというか、もっさり感がかなり印象に残ってしまい(ある意味、印象に残らないというか…)、高評価にならないのが残念。
・ロットバルトが普通…フクロウの衣装が短袖。ロシア系ではよくあるような気がする。
・ジークフリートの悩みがいまひとつわからない…これはファジェーチフが演技派ではない、というのではなく、そういう振付なのでしょう。
件のニーナさんですが、若いけれどテクニックが安定していて、動作ひとつひとつは完璧なのだけれども…、まあ、振り付けのせいなのだろう、とは思いますが、
・オディットと王子が恋に落ちた瞬間がわからない。
これは、手練れ?のルテステュ姐さんの演技を見た後のせいかもしれませんが、オデットはただナヨナヨしているだけにしか見えません。(ただし、踊りとしては完璧です)
・オディールも「元気のいい娘さん」くらいで、誘惑者に見えない。
ニーナさんが若すぎるせいなのか、そういう振りなのかはもはや不明。しつこいですが、踊りは完璧。
・最後の感動が不明瞭。
これは他のマリインスキーもの(セルゲイエフ版)に近く、ラスト、王子は戦うわけでもなく、死を決意するわけでもなく、文字通りオデットを掲げてロットバルトに立ち向かい(笑)、オデットの力でなぜか勝利する。(もはや、笑うしかない)
おまけに、これも旧ソヴィエト系にありがちですが、幕ごとにカーテンコールをするので、高笑いで去ったロットバルト親子すら戻ってくる。
なんとかならんのかい。
…ということで、旧ソヴィエト系の「白鳥」は全幕ものとしてみた場合あまり面白いとは思えず、オフでのニーナ姐さんは結構好印象なのですが、ダンサーの実力は今ひとつ?なのでした。
おしまい。