pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

ラヴロフスキー版『ロミオとジュリエット』

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 最近、白鳥で盛り上がっていましたが。
 ちょっと前に購入したマリインスキーの『ロミ&ジュリ』をやっつけ鑑賞。
 
 20世紀最大のクラシックバレエの演目がこの『ロミジュリ』だと思うのですが、なんといってもプロコフィエフの音楽が素晴らしい。
 初期のソフトバンクのCMで使われていた、あれですよ。
 
 プロコフィエフは同じメロディーの変奏が効果的で、繰り返し繰り返し、のやや偏執的なメロディーが特徴的だと思います。
 同じプロコフィエフバレエ音楽『シンデレラ』も素晴らしいですが、こちらは『ロミジュリ』と違い、いまだ名振付がないのが悲しいところ。
 
 日本でもっともよく上演され、比較的画像でもみることが易いのがマクミラン版。
 実際、私が実見した『ロミジュリ』6回のうち3回がマクミラン版。最初にみた舞台は・クランコ版でしたが、こちらはDVDでもみかけませんね。変わったところでは、デュアト版を観ました。
 
 まだマクミラン版を観たことがなかったとき、たぶんクランコ版を観終わったばかりのころ、振付の違いによる比較をしたくて、20歳そこそこのフェリ主演のビデオ(‼)を観、驚愕したものです。
 クランコ版は衣装のせいか、ピエロ・デッラ・フランチェスカの絵画のような、どこかのんびりとした牧歌的な雰囲気で、それに比べるとマクミランのどぎつい死生観、ドラマチックな振付が印象に残りました。
 
 が、これはビデオの出演者のせいだったのかも、と思う今日この頃。
 近年スターのいないロイヤルやABT、コジョカル客演によるミラノ・スカラ座でマクミラン版を観ることが続いて、なんだか毒の抜けた分、ありきたりにみえてしまうように。
 
 と、前置きが長いですが。
 
 そこで、より「ロマンティック」であるという噂をどことなくききつけたラヴロフスキー版を観てみたいなぁ、という気になったのですが、ついに最近出たDVD画像があることがわかり、お買い上げ。
 マリインスキーを代表する(かつ、私の評価が低い)プリマ・ヴィシニョーワ主演、ロミオ役はもはや若すぎて知らないシクリャローフ。全体に化粧の濃い(ゆえに野暮ったい)マリインスキーのキャストたちの中でなぜかロミオだけはナチュラル感あふれるスタイリング。ロミオのフレッシュさの演出なのか、シクリャローフ君のキャラなのか。
 指揮はゲルギエフ、今回は目立たない程度に画像に出てくる編集でよかった。
 
 ↑上記のようにマクミラン版に慣れてしまった目には、ラヴロフスキー版はやはりマクミランやクランコより前の時代の振付なんだなぁ、というようにみえてしまいます。
 ダンスを観ている、というよりは演劇を観ているというのに近い舞台づくり。
 というか、マリインスキーの芸風がそうなのか。
 カメラワークを抜きにしても、出演者の踊りで目を惹きつけられる、ということはあまりなく、エキストラが舞台の上をウロウロしている、という感じがすごくする。舞台わりが平面的なのかなぁ…。
 
 衣装やメークがあか抜けないのは…、ロシアだからか。役者のヅラ感もすごくあって、キュピレット家の当主が…、全然威厳が感じられない。
 なんというか、マクミラン版で形成されてきた私のキュピレット家は気取り屋で重々しい家系、というものがあり、ジュリエットにパリスとの結婚を強要するシーンも強権的父権の権化みたいのにみえたのに…、ここでは何とも弱々しい。
 乳母もなんかばあやらしさが薄くって、ヴィシニョーワのせいも多分にあるけれど、幼児と育て親の間の愛情がちょっとわかりづらい関係に。
 そして何より…、ティボルトが赤毛! ティボルトは黒髪の気取り屋でないと!
 初登場、今回の衣装がピエロみたかったせい(かつ、緑系。キュピレットは臙脂なの!)で、マキューシオかと思ったよ!ずいぶん性格が悪そうなのは同じなんだけど、なんだか下品。
 気取り屋キュピレット家の本領が描かれないのは「騎士の踊り」(これがソフトバンクのCMソング)でも同じ。好きなシーンなのになぁ…。踊りがやはり平面的なのよ。
 
 演じる人によってはマキューシオは明暗はっきりした二面性のある人物にみえることもあるのですが、ここではひたすら陽気な坊や。
 どの幕でもあんまり特徴がなくわかりにくいヴェンヴォーリオなんですが、今回の彼はほかの友人2人より老けた(疲れた)感が強くって、むしろこっちがティボルトっぽいなぁ、と思う。
 ふと、いまのマリインスキーは男性の舞踊手が不足しているという噂がちらりと脳裏をかすめました。
 
 さて、主役。
 ジュリエットは14歳くらい、とどこかで読んだような気がするんですが、ラヴロフスキー版のヴィシニョーワはそれほど幼い感じがしないで、せいぜい20歳くらいの若い娘さんにみえました。
 ↑だからか、子どもから、恋を知って大人に変化していく、というジュリエットの見所がひとつ消えている。
 パリスとの初対面も、わりと普通に接しています。マクミラン版だと、全身で拒絶されるパリス君(彼と踊ると、いつもジュリエットは死体のようになる)。ちなみに、ラヴロフスキー版ではパリス君は犬死しません。よかったね。
 
 ほかの振付では、ロミオが誰であろうと関係なく恋に突っ走っていく感のあるジュリエットですが、ラヴロフスキー版はちょっと説明臭く、乳母(と下僕)から「あれはモンターギュ家のロミオですって」と聞かされるシーンが挿入されており、心を痛めるジュリエット。やはり、どうみても分別があるようです。
 
 二人のパドゥドゥもわりとさらりとしていて、演劇的なせいもあり、わりと淡々と終わってく、というのが全体の印象です。可もなく、不可もなし。
 
 …と、急に以前観て「名作だ」と思っている映像を観なおしたくなりました。
 ひとつはフェリ主演のマクミラン版(当時はマクミランも生きていたと思う)、もう一つはモニク・ルディエール主演のパリ・オペラ座によるヌレエフ版(このときも、ヌレエフがギリギリ生きていたはず)。
 
 かつてはヌレエフ版がもっともよくできていると思ったものですが、2本ともなんとビデオなのでそうそう観られません。
 で、2本ともAMAZONで買いなおすことに。近年廉価版が出たようで、つい。
 
 そして、ナタリア・ベスメルトノワが主演というところは悩ましいところですが、大好きなムハメドフがロミオをやっているというボリショイのグリゴローヴィチ版もヒットしてきたので、こっちも併せて買うことに。
 
 …なんだか、年末年始はDVD鑑賞で忙しくなりそう…。