pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

『俺たちに明日はない』

なんていうと、切迫感のある西部劇みたいな邦題ですが、原題は『ボニーとクライド』。
1930年代初頭の、大恐慌下のアメリカに実在した、若い強盗カップルの出会いと別れの物語です。
強盗が一種伝説のスターになるのが、アメリカだな~と思います。
現在Gyao!で無料配信中。主役のフェイ・ダナウェイがファッショナブル、ということで、結構ファッション雑誌でも紹介されるフィルムです。
 
美人すぎるせいか、いなかの退屈な生活と退屈な男たち(←美人ならでは)に飽き飽きしていたウェイトレスのボニーは、ママの車を物色していた、出所したてのクライドと出会い、「退屈から抜け出せる!」予感と「ほんとうの自分をわかってくれる人かも」という淡い期待から、彼と行動を共にすることに。
とりあえずは強盗に強盗を重ね、やがて人を殺してからはその世界から抜け出せなくなってしまう。
↑とはいえ、そんな切迫感もなく、音楽も楽天的な感じで進んでいきます。
 
最初、「なんでこんなところにピアース・ブロスナンが?!」と思いましたが、クライド役はウォーレン・ベイティという俳優さん。見方によっては、ダニエル・ディ=ルイスにも似ている。
かわいいというか、いわゆる「甘い顔」系になるのでしょうが、あんまり強盗っぽくもみえないのだけれど…。
あとあと、それがある種の虚無っぽい顔にみえるから不思議。
 
くくりとしてはどうやら「青春映画」ということになるらしいのですが、あまり焦燥感もなく、能天気な感じにもみえます。
し、ときどき、仲間の人数が増えたことにボニーがうんざりして、クライドと二人っきりになりたがり、駄々をこね、クライドがそれをなだめすかす、というシーン、「典型的な男と女だな~」という感じでもありますが、そうした何気ない(←?)シーンのフェイ・ダナウェイのかわいさ&やさしさもなんというか絶妙、カワイイ顔のベイティが、ボニーを侮辱する保安官に激ギレするシーン、正気と狂気との落差が、なんだかすごい。
兄貴がバカ話してても、どこか笑っていないし。
とにかく、何でもないところに急に感情描写豊かになるのが、ていねいにつくってある映画なのかな~と思います。
現代の目でみると少々物足りないですが、↑こんな些細なところが、若さといえば若さですね。
やっと結ばれて、「真人間になったら~」を語るボニーに、月並みなことしかいわないクライドの逃げ腰姿勢、それにまたちょっとゲンメツするボニーの表情などにも、ある種のレアリスムを感じます。
 
待ち伏せされた保安隊にハチの巣にされ(たぶん史実)、だらっと落ちてくる二人の遺体。
それを保安官たちがゆっくり(やや無表情に)囲んで突然終わる、というラストが、これまたなんともアメリカらしい、乾いた感じがします。
 
1967年製作ということで、とにかく、それらしいフェイ・ダナウェイのファッションもみどころ。
典型的な田舎のアメリカ女=クライドの兄嫁・ブランチと並ぶと雲○の意味も納得。
キツいけど色っぽい、という感じが、少しブリジッド・バルドーと似ています。
肉感は違いますが、ある種菊池凛子とも似ている。