pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

スローな気分。~『恋人までの距離』

Yahoo!のまわし者ではありませんが(^^;)、Gya0!で上記のフィルムを放映中です。
なかなかいい映画だときいたような気がしましたが、これまで未見。

デビューが早いので、いったいいくつになったかわからないジュリー・デルピー(17歳くらいで『汚れた血』にでている)が主演なので、ますますいつの映画だかわからなくなりましたが、1995年の製作で、デルピーは25歳くらい、ほぼリアル年齢の学生役。

ブタペスト発パリ行きと思われる列車のなかで、パリ帰路途中のデルピーと、ウィーンから航路でアメリカへ帰国しようとするイーサン・ホーク演じるアメリカ人学生が偶然隣の席に座り、意気投合、ウィーンで下車して翌朝のフライトまでの一日を過ごす、という、ただそれだけのお話。

ウィーンという街こそ、パリジェンヌとアメリカ人青年が歩くには、時間が止まったような雰囲気があってぴったり。
休日のサラリーマンや、東欧的「ジプシー」(※いまでは差別用語だそうです)、突然詩人がいても、音楽愛好家がいても、なぜか違和感がない。
行けばわかりますが、「オーストリア」はOst(東の) Reich(帝国)の名のとおり、西欧というよりむしろ東欧臭を濃く感じます。まさにオスタルジア。

ぶらぶら歩きながら、この二人はほんとによくしゃべる。
でも、実際には名前以外はあまり自己紹介がなくて、この会話の中から、二人の性格や現在がわかるというつくりになっています。

若いのに、なぜか「死」ばかり考えている(※自殺願望ではない)デルピー。
ソルボンヌの哲学科なの?なんて思ってたりもします。

そして、女の子にばっかり打ち明けさせて、実は自分のことをなかなか話さない、ズルい男・イーサン。
途中、「自分に注目されないのをすねている子供みたい」といわれていますが、まさにそのとおりな感じ。

自分がおばあさんみたいというデルピーはなんとなく男性にうんざりしていて、イーサンも実は失恋したばかり。
ずっと話を続けていくうちに、お互いに老成した(※ある種の若者にはありがち)心と子どもっぽさからお互い解放されて、相応の自分を取り戻して別れる。
書いてしまうとなんでもありませんが、それがなんというか、いい感じなのです。

’90年代の若者はこのように旅したものです。
けして、携帯でお互いを呼び出したり、電車の中でメールをうちまくったりはしないもの。
そんな感じが。とてもスロー。
そんな気分が、1990年代的だな~と思うフィルムです。