pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

「チェ 39歳別れの手紙」

ソダーバーグ監督の映画の試写会は休憩をはさんで2本続けて上映されたそうですが、私的には一般上映もそうしてほしかったな…。ぶつぶつ。

「29歳」とは違って、視聴者は成功しない革命の進行をみることになるわけで、結構戸惑いがありました。でも相変わらずフィルムは淡々と進み、ゲバラや同志たちの「焦り」「失望感」が過剰に演出されることもなく、終幕を迎えます。また、前作には回想シーンや、将来の国連演説のシーンなどの挿入がありましたが、今回はひたすら行軍行軍の進行形。ちなみに、製作者としては本当はボリビア戦だけを描きたかったらしいデス。

中南米という地は、日本にいるとなかなか分かりませんが、いったんその地に立ってみると世界観が変わってしまうような錯覚をいつも覚えます。例えば、世界の中心はどこか、という視座がまるっきりかわってしまいます。
同じ南米でも、歴史や国の事情は様々(当たり前ですが、大陸なのです)。内陸の国・ボリビアはとくに変わった国らしく、後世の私なんかは「なんでボリビア、よりによって」という気になりますが…。
今回の映画には、俳優陣がみなネイティヴとは限らないようなのですが、それでもキューバ戦とボリビア戦の集まってきた兵士の顔ぶれから、民族構成の違いをしみじみと感じます。
ボリビアインカ帝国にかかっていた国ですし。
植生も地形も、映像に違いがあって、臨場感あります。山山山。

話はそれますが、5年前にメキシコとキューバに行ったとき、たった一瞬ではありますが、それぞれの民族構成の違いを感じました。キューバではあまりみかけませんでしたが、メキシコ(カンクン)にはマヤの子孫のような顔立ち(神々しい石像みたい)の人々をみかけました。
この旅のとき、私と友人はとくにリゾートに来たわけでもなく、キューバからの帰国途中の飛行機待ちをしていました。
あまりにも疲れていたのでホテルのプライベートビーチで昼寝をしていたのですが、リゾート地ですから、ボーイさんたちがドリンクを売りに来てくれます。
みんな普通に働いているだけだから別に問題はないのかもしれないけれど、ふと、売り子をやっている人たちがみんな先住民系の人々ばかりだったので、民族的な社会格差を垣間見たような気分になりました。
ビーチで眠っている自分も無意識のまま過去の歴史に寝そべっているような気がして、自己嫌悪した思い出があります(もともとリゾートは好きでないのが、ますます好きでなくなった一件です)。

あ、映画の話が…、本当にそれましたね(^^;)。

冷めた目でみると、そうした複雑な事情をかえりみず?「南米全体の革命」を目指したゲバラはあまりにも理想主義者的過ぎたように思われますし、「39歳」にはゲバラに同調する外国人同志が「29歳」の革命時より多く参加しているようにみえますが(余談;女性スパイがみたことあるな~と思っていたらやはり「ラン・ローラ・ラン」の骨太ドイツ人女優だった。ドイツ系アルゼンチン人役)、それも1960年代という時代のムードを感じさせます。青年による反体制運動というのは、当時の世界的ムードですね。

そして、アメリカ(合衆国)。アメリカ映画ですが、ここでのアメリカという国家の見方はかなりクールだと思います。
最近、オバマ大統領の誕生を自由の国・アメリカの象徴として羨む、安直なムードがマスコミにありますが、過去のことを考えると、アメリカは本当に正義か、やはり疑問を感じてしまいます。
冷戦中はいかに「赤」を広げないか、アメリカは必死だったわけで、影響力のある人物は徹底的に排除したかった、そうした空気が伝わってきます。いま思えば、黒いし、ベクトルが逆の思想統制

こちらには前回あまり登場しなかった、対立側の権力者が描かれており、なかなか興味深いです。

二本続けてみると、そういう意図はないのかもしれませんが、フィデル・カストロは「すごい」という印象が一部に残るかもしれません(終わりに、カストロに叔父を殺されたキューバ人が登場し、そうしたムードをちょっと中和しているようですが、弱い)。

ゲバラを主人公にしてゲバラの映画にあらず。
あまりうまくまとまりませんが、興味深いフィルムだと思います。