pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

冷戦の終わりとエンターテイメント-「カジノロワイヤル」

有名なシリーズですが、最近まで007シリーズはちゃんとみたことがありませんでした。
たぶん、自分と同世代ではないからでしょうね。

このシリーズもしばらく低迷期にさしかかり、しかし昨年の今頃か、6代目ボンドのダニエル・クレイグが金髪碧眼であることが話題になったことをきっかけに、映画チャンネルでも見直しがあったようで、古いシリーズの連続放映がありました。
このとき、ちょっとだけ「007は二度死ぬ」をみることがあり、噂にはうすうす知っていたものの、あまりにもヘンな日本趣味炸裂かげんに驚き(^^;)、いまさらながら「観たい!」という欲求が高まったのでありました。

しかし、初代のショーン・コネリー主演作のDVDはなかなかレンタルではみかけません。
仕方なく?というより、他人の書評で気になった原作を先に読むことになった「007は二度死ぬ」。
映画の破天荒ぶり?に比べれば、原作者は随分日本に理解があるように感じました(ほんとうのところ、わかりませんがね…)。
で、以外にも原作はそれなりに名作なのでは…、と思い、第1作の「カジノロワイヤル」も年末に原作を読んでみました(こっちも、最新作の公開でやたら本屋でフィーチャーされていたから手に入りやすかったのですが)。

原作はやはり1950年代の時代の空気を反映して、冷戦真っ只中の共闘路線が描かれています。
イギリス-フランス-CIAの情報部員の連携と、フランス共産主義者とロシアのパイプ。
戦争期の敵国としてちらりと出てくる日本。
かつて植民地を多く支配していたイギリスらしい、カリブ諸国との関係。

あたりまえですが、最近作としてリメイクされるにあたり、このあたりの事情が現代を反映したものに替えられています。
冷戦時代はいわゆる西側は敵を何が何でも「ソ連」にしておればよかったんでしょうけど、近年はここらへんの描写が複雑に濁されて「テロリスト」。
古い原作の現代化を図った苦心はわかりますが…、やはり非欧米圏の私がみると何となく、白々しい感じがします。

これは影響を受けている日本の作品にもいえることですが、冷戦が別の形の紛争に変わったいま、日本人が欧米間の価値観そのものに「正義」をみる設定に破綻をきたしているにもかかわらず、シリーズを続けているものは多くあるように思います(マンガですが、河○○巳の作品とか)。
時代を反映してか、Mは女性になっていますが、原作を読めば明らかにボンドは女性差別者だし、その部下に収まるとは思えません。ボンドのマッチョ具合、原作は戦争が終わったばかりの気分を反映しているからこそあるんだろ~と思えば、私にはこの作品が「ドラえもん」化しているように感じるんですがねぇ。

フィクションはフィクション、エンターテイメントとして割り切ればいいんでしょうけど、「リアリティを追求した、原点回帰を目指したハードボイルド」なんて謳われると…、期待してしまうじゃないですか。
自分にとっての「リアリティ」との温度差を感じます。現代人は複雑ですな…。