pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

『モーターサイクル・ダイアリーズ』

「ダイアリーズ」といえば、なんとなく青春映画っぽいですナ。『バスケットボール・ダイアリーズ』とか。

『モーターサイクル~』は、ずっとみたいと思っていたフィルムでしたが、なんとなく気が重く、未見だった映画。いつものごとく、ただ今GyaO!で公開中。
中南米(舞台)映画をみるとかなりの確率で出会ってしまう、メキシコ人俳優ガエル・ガルシア・ベルナルが若き日のチェ・ゲバラ役を演じています。

ロードムービーとか、青春映画のジャンルで紹介されることが多い映画ですが(←だから気が重かった)、実際みてみると、どちらかというと、この長い旅がいかにゲバラの革命思想に影響を与えたかがわかるような流れになっていて、南米大陸の魅力と厳しい現実が凝縮した、しかしそれを淡々と描く物語。
当時ゲバラは23歳、キューバ革命時が29歳だから、振り返るとまさに疾走的な人生に妙にしみじみ。
カストロがあくまでも祖国の革命を推進した人物とすれば、ゲバラは汎ラテンアメリカ的理想主義の革命家だったのだろうなぁ、なんて思わせる映画です。
主演者は違いますが、ソダーバーグ『39歳別れの手紙』と見比べると、なんとも感慨深い。

古いヨーロッパを思わせるブエノスアイレスから始まって、どこまでも広がるパンパの風景。
1月なのにさすが南米は暑いのかな~、と思っていたら、南半球だから夏なのでした(^^;)。
国境を超えるといきなり高地で一転、雪景色。
チリの都市部はアルゼンチンよりやや土臭さが残り、少しずつ、南米の奥地的な様相がみえはじめます。
このへんでバイクは早々と壊れてしまい、徒歩とヒッチハイクの旅に。
あんたらは猿岩石か(←古い)。
チリの銅山を目指す途中、虐げられた労働者の現実を目の当たりに。これは、1952年が舞台ですが、近年のチリ銅山事故のことを思うと、いまもあまり変わっていないのか…なんて思ったりもしますが。
そして少ずつふえていく先住民の姿。
ペルーまで来ると(※すごい高地)、もはや都市の風景は望めない雰囲気。
理想主義的なゲバラの「団結」と、旅の途中ですれ違う農民の語る「団結」は、どこかかみ合わないような気がするのが、その後のゲバラの人生を思うとやや痛切。
ただ、貧しくても誇り高いインカの末裔の表情をみると、いつもなぜか尊敬の念が起こるから不思議なものです。
対資本主義的な社会矛盾だけではなく、ハンセン病患者への慣習的な差別に違和感を覚える描写に、人道家ゲバラの一面も描かれています。
橋のない川』という小説?がありましたが(未読)、言葉の上ではそれをほうふつとさせる川を泳いで渡るシーン、激情家ゲバラの比喩なのでしょうが、圧巻。
最後、ボランティアとして働いたペルーの療養施設を出、まるでアルゴノーツのようにコロンビアへ川で渡り、旅は終焉へ向かいます。

全編をとおして友人のグラナードがややお調子者に描かれているので、若干、ゲバラの理想主義が過剰にみえてしまうのが少し残念。
↑この人はなぜか、何考えているのかわからない虚無的な感じもしますが、最後に本人(老人)が一瞬登場します。
意外と?、いろいろ業績を残した人みたいで驚き桃の木。

南米文化に触れると、地球の裏側からモノがみえるみたいに、気づかないうちの思い込みというのがあるんだな~と、いつもドキリとさせられます。