ずいぶん前に雑誌のコラムに載っていて、今思えばラストのワンカットだったのだけれど、なんだか妙な感じのするファンタジーCGのようで、どういう映画だったかいまひとつピンと来なかった『パンズ・ラビリンス』。
Gyao!で無料放映中だったので、みることに。
あれからいつの間に時間がたったのか、2006年の映画でした。
さて。
カテゴリーにあった「ダーク・ファンタジー」って何?という思いと、意外にR12だったのに軽く驚き。
…確かに、みればみるほどダーク。
スペインも、キョーレツな太陽のもとの生と死のコントラストのつよい映画が多いところですが、はっきり言って、これはメキシコ的ゴシック映画。
教会のキョーレツなウルトラ・バロック建築とか、フリーダ・カロの絵とか、南米文学とか。
大地に転がった骸骨というメキシコのイメージと共通する、死の影の濃いフィルムです。
21世紀になって何となく記憶が薄くなってきましたが、最近まで、スペインという国はフランコの独裁政治下(というか、多文化国家を「統一スペイン」下に押し込めようとして、バスク戦線とか民族派のテロリストとの戦争下)にあったということを、久しぶりに思い出しました。
前々回のサッカー・ワールドカップで「スペイン」優勝があれこれいわれていたのも、複雑な歴史があってのことですよね。
この辺、第2次大戦の複雑な政情が、ちょっと混乱気味だった。
それはさておき、そうした厳しい抑圧の時代の、フランコ政権下の大尉と再婚した母親について山奥の村に入った少女の、悲劇か奇跡かが混とんとした物語。
やや無表情な女の子が映画の調子にあっていて、ものすごく世界を暗くしている。
最後、「自己犠牲の試練」に耐えて、地下の王国の王女に復帰したようにみえるラストは、一方でその王妃(母)が死んだ母親と同じであることで、そこが「死者の国」=大尉によって殺された少女の幻想、という残酷な現実を暗に示しているようで…、何も言えません。
いつも思うのだけれど、戦争の怖さは、激しい戦闘のシーンがなくても十分です。
戦争の怖さは、じわじわと人の日常をむしばみ、そこから逃れえない非力さの痛感にあると思うのですよ。