pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

ワイエス私見

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さいたま・ドゥアト公演が3時という中途半端な時間に開演だったので、日帰りしか日のとれなかった連休は交通費的にも残念(←S席7000円のチケットより高い)であり、無理やりなんか展覧会みてやる~、という意気で渋谷のBunkamuraに行ってきました。ザ・ミュージアムではアメリカの具象美術の巨匠アンドリュー・ワイエス展が開催中です。

10年ほど前、不況の後に次々と倒れていった百貨店系美術館の最後の生き残り?、文化村。
以前より地味~な感じになっていますが…、いまだがんばっていてエライ。期待していたよりワイエス展は面白かったです。

やっぱり10年ほど前に文化村でみたエドワード・ホッパーと合わせ、私の中でワイエスアメリカの二大巨匠。あまり独自の美術を生み出さなかった(←偏見)アメリカで唯二、アメリカらしい美しさを感じさせる画家です。どちらも具象画家だけど、古臭いアカデミズムの具象ではなくて、情感豊か、どこか孤独感を感じさせます。
ホッパー、ワイエスレイモンド・カーヴァー(←この人は小説家)、この3人には私の中で共通する空気感があると思います。アメリカは嫌いだけど~、私の好きなアメリカはここに。

ワイエス作品でおそらくもっとも有名なのは「クリスティーナの世界」だと思います。実際使ったことはないけど買わされていた美術の教科書に載っていて、当時かなり私の目をひいた作品でした。
この作品は展示されていませんが(以前NYでみた)、「クリスティーナの世界」について、少し誤解していたことに今回初めて気づきました。
クリスティーナは実在の人でワイエスより年上の、このときおそらく中年の女性で、手足が異常に細いのは描写上の誇張ではなく障害を持つ人の肢体だったからのようです。
思わせぶりなタイトル、後ろ姿がどことなくはかない思春期の少女の夢想的な世界への憧れを示しているようだとずっと思っていたのですが…。ずっと強い人間の尊厳が描かれていたようです。
自分が誤解していたということにはちょっとショック。

今回の展示は、一つの作品についての克明なスケッチ、水彩画(グワッシュ)、テンペラというさまざまな過程が丁寧にたどられており、しかもそれらのほとんどが日本所在というのに驚き。やはり、ワイエスは日本人の好みに合うのか…?

以前バーゲンで買ったワイエスの風景画集(ホイットニー美の図録なのになぜかドイツ語)をみたときはあまり思わなかったけれど、個人的にワイエステンペラより水彩画がよいな~と感じました。
セピア~黒の色の出し方がうまい。濡れた土のような、でも乾いて、寒いけど、不思議な安定感と安心感、程よくつよい、…なんともいえない感じがします。

今更ワイエス、されどワイエス、なひと時でした。