pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

ロッセリーニ『無防備都市』

1945年製作の、イタリア・ネオレアリズモ映画のもっとも有名なフィルム。
ゴシップ的には、これをみたイングリット・バーグマンロッセリーニに手紙を出してイタリアに赴き、不倫騒動となってハリウッドから追放されたエピソードも有名ですが(^^;)。

ちなみに、「無防備都市」とは占領後の戦闘を回避するため、被占領側の武装が解かれた地帯、という意味です。
ムッソリーニ失脚後、ドイツ軍によって占領されたローマで、ゲシュタポによるパルチザン狩りが行われており、主人公?の下宿に強制捜査が行われるシーンから始まります。
この辺、人間関係が最初よくわからないから、なじむのに時間がかかります。

同じ同志の印刷工、パルチザンではないけれど、ファシストに反感をもっているその婚約者、その息子、自分の立場でできる限りの協力を示す神父などが主な登場人物で、占領都市らしい重々しい雰囲気(地方も違うけれど、先日みた『揺れる大地』の騒々しさがまったくない)の中、それぞれが自分に偽ることなく生きている姿が描かれています。
そういった意味では、抑圧する側のドイツ人将校の支配力も、やや身を持ち崩し気味に贅沢に生きる女優(主人公の恋人など)も、自分の欲望のままに生きている「リアルさ」をもっています。

意外に全体が静かな映画ですが、後半、あまりにもドラマが多くて、ハラハラ、涙ありの展開になっていきます。

子どもたちも子どもたちなりに「正義の戦い」に参加していて、ドイツ人兵士の目を盗んでアパートに隠した爆弾を神父ととりに行くシーンはかなりドキドキしますし、
結婚式の日にアパートに強制捜査が入り、連行される印刷工のあとを追ってドイツ兵に射殺されてしまう女性の死には涙涙(T.T)。
ローマを離れることになり、殺された婚約者の息子とお別れのシーン、印刷工を「パパ」と呼んで母親形見を渡す男の子にまた涙。

終盤、「愛してくれない」腹いせに女優にタレ込みをされ、警察に連行される主人公たち。(←このパターン、結構よく聞くよね…)。
拷問が待っていることを知りながら、静かに拘留所で過ごす主人公と神父の姿は圧巻です。

ゲシュタポたち(映画では実際にドイツ語を話している)は拷問をする一方の部屋で、毎晩、音楽を聴き、酒を飲んでいます。
ナチスを題材にした映画ではよく描かれるシーンの構成でありますが、ここに興味深い描写があります。
主人公がなかなか口を割らないのにイライラしたゲシュタポの高官に、酔っぱらった同僚の将校(おそらく年長者)がこういいます。
「20年前の戦争でも、われわれはフランス人の抵抗者の口を割らせることができなかった。やつらの自由への信奉というものを、われわれは全く理解できない。支配することでわれわれが得られるのはただ、憎しみだけだ」
もちろん、高官は激怒。

リアリズムの意味が、これもまた最初想像していたのとは違いますが、何というか、ただ淡々と物語を描いて、後は観る人がそれをどう感じるか自然にゆだねる、それが「ネオレアリズモ映画」なのかな~というのが、『揺れる~』とこれの2本をみた後に思った感想であります。