というわけで。
7月に観たオールスター・ガラでのザハロワ様の神々しさを確認するため、スカラ座で2004年に客演したDVDを鑑賞してみました。
購入可能なソフトの多いザハロワ+ボッレ+スカラ座の組み合わせですが…、ボッレもある意味、私の中の評価の揺れるダンサーで。
現在は40歳を超えたベテランになりましたが、確かに、世界の(歴史的な)プリマたちに釣り合うダンサーも、彼くらいなのか…。
長身のザハロワとのバランスは、確かに絶妙。
しかしそうなると、もう一個の不安要素のスカラ座というカンパニーの弱さはやはり浮き彫りに。
群を抜いた二人に比べ、動きもスタイルもすべて、もっさりしていました。
さて。
ガラでそう思った通り、やはりザハロワのジゼルは守護霊型。
というか、ザハロワもダンサーとしては素晴らしく、完璧なんだけど、全幕ものの主役としてはどうなんだろうな…と思った今回。
前にも書いたように、『ジゼル』は白鳥以上に、男女関係にイライラしてしまう古臭い物語にみえがちで、スカラ座版のような守護霊型はまさに、私にはどうにも感情移入しにくい、という前提があるのですが。
それを差っ引いても…、脚本が悪いのかもしれませんが、1幕の生きてるジゼルとアルブレヒトの間に、どうも愛情の交感というのが感じられない。
うーむ、ザハロワはあまり、少女っぽい役が合わないのかも。
ヘンにあどけなくならなくてもいいけど、一応恋愛がカギな物語のハズでしょう。
その割には、狂気のシーンはそれなりで、一連の流れでみるとなんだか物語になっていないような感じ。
ボッレのアルブレヒトも、ちょっと淡泊すぎるのか、あんまりこの恋愛が原因でショック死するようには見えないのよね…。
ただ、パートナーシップや踊りそのものはすべて完璧(しかし、スカラ座のイモっ子たちとの落差が半端ない)なので、なんというか、抽象的なバレエ、とみればすごく優れています。
そういう意味では、2幕だけ見たほうが面白いと思いました。
フェアリー感もテクニックと情感表現でものすごくよく、ザハロワは幽霊専門か(バヤデールとかね)?、なんて思ったりもします。観たことないけど、ジュリエットとかできなそう。
個人的には、オペラ座版のビジョルやライト版のカスバートソンのほうが、2幕の霊の演技が、なんというか、ジゼルは死んでしまっているけれど、自分の意志ではどうにもならないところでアルブレヒトをかばってしまう、とみえた、表情を殺した演技のほうが、『ジゼル』という物語の悲劇性を強調するようで、好みだなぁ。
ザハロワがどう、とか抜きに、このスカラ座の振付はいまひとつ。
ボッレもうまいんだけど、細やかな情感表現はどうなのかな…。