pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

マッツ・エク『ロミオとジュリエット』

すっかり秋めいて、素敵な日和が続きますが、どうやら寒暖差アレルギー気味。
ほとんど水を飲まないのに、身体の水分のほとんどが鼻水化しそうなので、ハイボールで水分補給(--;)。
 
それはさておき。
 
また買ってから捨て置いていたDVDをようやく鑑賞。
リージョン障害に遭ってなかなか手に入りにくいマッツ・エクの『ロミオ~』を観る。
マッツ・エクといえば『ジゼル』が有名なような気がしますが、ひととおり古典の振り付けをやっているようですねぇ。
 
これまで観た『ジゼル』と『白鳥』はわりと初期~中期作のような気がしますが、これは1997年初演、録画も2013年と新しい。
ロイヤル・スウェーデン・バレエ団ですが、ジュリエット役とベンヴォーリオ役は日本人ダンサー。
 
前知識のあった『ジゼル』などと違い、どんな幕になるか全く想像せず観はじめたので、最初はやや困難。
『ジゼル』や『カルメン』のような、重心の低いステップはやや少なく、マッツ独特の精神障害を思わせる描写も控えめな感じ。
おまけに、音楽が一番振付の多いプロコフィエフではなくチャイコフスキーだったので、ちょっとシーンわりが不慣れ…。
でも慣れてくると、誰が誰で、どのシーンかわかるように。当たり前ですが、大体の物語はプロコフィエフ版と同じように進みます。
 
変わった版のロミ&ジュリは結構みているのですが、マッツ版も衣装がすっかり現代。何となく、ノイマイヤー版を思い出しました。
そしてこうなるとなぜか、キュピレット家は「ウエストサイド物語」みたいにラティーノ風ちょい悪系で、モンターギュ家はヤンキー(本場のね)さわやか系アメカジ。
ティボルトは一目でわかります。なぜかキュピレット家は乳母までもセグウェイみたいのに乗っていて、暴走族なんでしょうか…?
有名なソフトバンクのCMソングはプロコフィエフ版なのでありませんが、やっぱりキュピレット家は形式的でキザなのか、山高帽の紳士たちの群舞があります。
 
初登場がわかりにくかった、マキューシオとベンヴォーリオ。どっちかというとベンヴォーリオがせかせか動いていたので、最初はこっちがマキューシオかと思った。
二人がセットで動き出したので(最初、スキンヘッドのマキューシオだったので、マシュー・ボーンの『白鳥』のようなナイトクラブ入り口でケンカかと思った)、ようやくロミオの友人であることがわかりました。
 
マキューシオは強面革パンのお兄さんなので、陽気なキャラではないのか…と思ったのですが。
ふと、確かにマクミラン版などにある刺されシーンの見せ場にみられる、意外と複雑な内面をもつマキューシオの性格が思い当りました。
何となく…、このマキューシオにはロミオと、そして何よりティボルトに対する奇妙な感情(ちょっと同性愛っぽい)が感じられます。
 
そしてもう一つ、奇妙な感情が感じられるのはティボルトとキュピレット夫人。
ロミ&ジュリの正しい筋は実はよく把握していませんが、マクミラン版などでも、甥っ子で跡取りのティボルトの死に対するキュピレット夫人の嘆きはかなりの見せ場なのですが(※実子はジュリエットのはずですが、やはり時代的に実施より男系の嗣子のほうが大事なんでしょうかね)、エク版のキュピレット夫人の場合、甥との禁忌の愛情を演出しているように…思われます。
 
↑だからか、マクミラン版などではとても強権的なキュピレット家当主=ジュリエットの父はやや影が薄く、その存在の薄さが悩みなのか、ソロで苦悩の踊り?をおどるパートがあります。
 
これまで観た『白鳥』『ジゼル』『カルメン』ほど露骨な性的暗喩はないようですが、やはりそれなりに、奇妙な感情をみせるエクの振付。ただしその分、何となく主役たちの影が薄いです。
 
冒頭、このおっさん誰?という人がのたうち回り、時々また群舞に紛れて床の上にはっている。
明らかに他のダンサーより年取った人ですが、2回目でようやく、ヴェローナ公であることに気づきました。
マクミラン版などでは絶対的審判のような厳かな存在の公ですが、ここでは奇妙な目撃者のよう。
なんとなく、エクの分身(ダンサーはニコラス・エクとあり、親戚か?)みたい。
 
…ちょっとアクがつよいけど、もっとエクの作品を観てみたいなぁ。