pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

『カラヴァッジョ』スキ?

16~17世紀のイタリアの画家・カラヴァッジョの追従者を「カラヴァッジョスキ」といいます。
「カラヴァッジョ好き」みたいですよね(^^;)。「タベルナ」と同じくらい、ある意味日本人にははまる外国語です。

それはさておき、長い間放っておいたバレエのDVDをようやくみました。
それが『カラヴァッジョ』。

個人的には、バレエDVDは新宿のタワレコか渋谷のHMVが品ぞろえがよくてそこで探すのが好きなのです
が、あまり東京へ行けないシーズンにはアマゾン買いをよくします。
しかしアマゾンはあまり親切ではないので、リージョンコードの正誤も如何、内容もちゃんと教えてくれないことがあります。
だから、この『カラヴァッジョ』も誰が振り付けなのか、解説は一切なく、画像を頑張って拡大するしかありません。
かろうじて主役がマラーホフということがわかる程度で、けしてマラーホフ好きではないのですが、買ってみたわけです。

演じているのは、マラーホフが芸術監督をつとめるベルリン国立バレエ団
5年ほど前の来日ステージをみましたが、あまりいい印象のないカンパニー。
ドイツのバレエ団は、シュツットガルトハンブルグなど実力十分のカンパニーがありますが、どうもベルリンは旧東ドイツ的もっさり感がある(実際、東欧系のダンサーが多かった)。
恐るべし、冷戦の遺風?
マラーホフも、ダンサーとしてはうまいんだけど、なにか総監督的才能には欠けるような気がします。

そんなわけで、カラヴァッジョの何をみせてくれるの~?と不安いっぱいに幕開け。
振付のマウーロ・ビジョンツェッティって誰?

ちなみに、カラヴァッジョはイタリアのマリエリスムからバロックへの過渡の時代の画家で、非常にスキャンダラスな人物(らしい)。
聖書のシーンを描いてくれという教会の依頼を受け、制作したところ、お坊さんたちを憤慨させてしまう。
というのも、聖なる聖者たちをそれらしく(聖人らしく)描かず、市井のフツーのおじさんやおばさんをモデルとして登場させてしまったから。
↑現代人には憤慨の理由がよくわからないようなエピソードですが、昔の宗教画というのはそういうものだったらしいようです。
(どうでもいいことですが、昔のお坊さんにはきっと、現代でいえばモリムラの絵を見せられたような感じだったんだな~と、ふと思いました)

加えて、人殺しをしているし、わりと早く亡くなった画家であります。

さて舞台は、マラーホフのソロからはじまりはじまり。
…またどうでもいいところに気をとられたのは、マラーホフも年取ったな~ということ(四十路か?)。
もともとけしてハンサムではない(顔のすべてのパーツが前に出すぎ)のだけれど、「苦悩に満ちた表情」風の表現がパフォーマンスとしてではなく、生で痛々しい。
最近、草刈民代さんが新聞の全面にヌード広告をうったとき、「きれいというかコワい」といった、バレエ好きではない知人の話をききましたが、それに似ている。
パンツ一丁みたいな衣装はどうも…、似合ってませんね(~~;)。
ベルリンは比較的若いダンサーが多いようで、彼らの中であきらかに一人、マラーホフが異質。
若くてあまりカンパニーの統一感のないダンサーは、モダンには向かないというのが私の意見(表現力が弱い)。
なので、最初、かなりシラケてしまいました。

おそらく、マラーホフがカラヴァッジョらしく、カラヴァッジョに関係する演出がところどころわかります。
(ドラマティックな明暗法を使用したカラヴァッジョの絵画を思わせる照明、バッカスのブドウ、同性愛のほのめかし、殺人など)。

後半、ほとんどがソリストのソロまたはパドゥドゥになり、さすがにソリストはうまい。
ので、群舞はないほうがいいんじゃ…と思ってしまう、全体の演出。
モダンかクラシックか、全体がすっきりしません。

ところで、前回の来日時に「マラーホフの秘蔵子」と盛んに宣伝されていたポリーナ・セミノワが今回もパートナー。当時19才のプリンシパルですから、まだまだ若い。
前回は実際の舞台で転んでしまったのを見、やっぱりただの宣伝文句か~、と思ってしまいましたが、今回はすごく、うまいダンサーだな~と思いました。身体がすごく柔らかくて、伸びのある表現力。たぶん、カラヴァッジョのファムファタル的な役なんでしょうね(クラシックでいえば精霊か)。
前半は聖女のような顔をしていますが、後半は悪女を思わせる感じ。
二人のパドゥドゥはさすがにみごたえがあって、ただ、衣装のせいか、『ダフニスとクロエ』だったらな~と思ってしまいました。

ほかに意外なところで、中村祥子さんがソリストで登場。いまはここにいるんですかね。
初めて観るダンサーですが(かなりベテランのはず)、なかなかよいダンサーなのですね(ただ、殺されるときは無表情なのは東洋人の性?)。

後半は慣れたせいもあって、↑のように勝手に楽しんでいましたが、よいステージかといえば…ですかね(~~;)。
未見ですが、ディレク・ジャーマンの映画『カラヴァッジオ』をみていれば、少し印象が変わったのかな~?