個人的に、わりと長い間「椿姫」が苦手でした。
バレエに限らず、どうもアルマンの若い男ぶりにイライラさせられることが多く…、というわけで。
バレエはギエムとニコラ・ルリッシュペアの「マルグリットとアルマン」実見と、マリシア・ハイデの歴史的な映像、オペラ座のBDを見たことがあり、オペラ座に関しては、これも長年苦手だったアニエス・ルテステュ主演だったため、一度見た時はあまり心に残らず、しばらく放置していました。
しかし、このところのオペラ座再見ブームと、私とアニエスさんの和解?、自分も歳をとって寛容になったこと(笑)などの要素が重なって、お正月休みの鑑賞映像に選んでみました。
究極に言って、マルグリットを演じられる人は限られているなーと思いました。
アニエス様は、かなり抑えた感情表現で、年上の女性の心の動きを繊細に表現していたと思います。
ある意味、映像向きで、実際の舞台だとどんなんだろう…。
こうした演技が、終始流れるショパンの調べと一体化しており、淡々と、文学的な舞台を流れるように振り付けるノイマイヤーの洗練度は素晴らしく、カンパニーとして文学的表現がうまいオペラ座ならでは。
アニエスはアデュー公演に椿姫を選んだそうですが、さもありなん。
アルマン役のステファン・ビュリヨン氏は、初見の時は「誰これ?」感が強く(当時はエトワールでなくプルミエ)、のめり込めなかったのですが、粗暴な若さ、というタイプのアルマンではなく、どこかしらある暗い表情が、流れるようなノイマイヤーの舞台を邪魔せず、ある種の若者のリアリティを含んでいるなーと思いました。
この人も、いつの間にか(というか去年)引退を迎えたエトワールだったよう。
時の流れが経つのは早いもの…。
そのほか、脇役(と言っても、重要な役どころ)がさすがオペラ座で、劇中劇のマノン役のデルフィーヌ・ムッサンのマルグリットとの無言のリンクがなんとも言えないし、デグリューはホセ・マルティネズ、こんなちょい役でも丁寧で役にピッタリ(マリオネット感大)。
このところ偏愛のカール・パケットもアルマンの友人役としてちょい遊び人役が板、「白鳥」のロットバルトとは逆ベクトルではまり役のような気が。「オネーギン」のレンスキーとかも合いそう。
話変わるけど、ビュリヨン氏はわりと悪役キャラで立っているらしく、ヌレエフ版のロットバルトもレパートリーとしてかかれていたから、カール様のような舞台をやったのかな…。イワン雷帝もやっているそうで、ある意味、現役時代に実見したかったな…。
それから、マルグリットの友人役のドロテ・ジルベールも、小狡いところがカール君とナイスコンビでした。
パチパチ。
今回映像を見て、ノイマイヤーの「椿姫」は、当たり前かもしれませんが、一連の流れとして「人魚姫」や「ニジンスキー」と似た流れだなー、と思いました。
ハンブルグ・バレエは、この映像の2009年ごろのようなオペラ座ほどキャラがたったダンサーはいませんが、それでも誰であれ、この流れを完成させるようなダンサーたちが豊富(だと思う)。
そのノイマイヤーもついに引退(というか、ハンブルグを離れる)そうで、さよなら公演?が3月にあり、演目的にはあまり興味のない「シルビア」が全幕タイトルですが、頑張って見に行こう、と思う今日この頃。