pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

『エターナル・サンシャイン』

Gyao!で無料配信中なので、みました。

今まで観たことはなかったのですが、コメディを封印したジム・キャリーの名作ラブストーリー、ということでいつかは観たいなぁ、と。
とか何とかしているうちに、結構昔の話(2004年?)になっていたようです。

恋人役がケイト・ウィンスレット、ロマンチックなジャケット(『眠り姫』みたい)、「喧嘩別れして恋人に自分との記憶を消去されてしまった」という話、ということは知っていましたが…、観ていると、なんだか、思っていたのとは違う…。

と、あとで知ったことですが、脚本はあのカウフマン。
マルコヴィッチの穴』とか、『アダプテーション』のあの人ですか~。
そりゃ、一筋縄ではいかんわね。

冒頭は、普通に、失恋したばかりのジム・キャリー=ジョエルが、傷心のままに電車に乗って、仕事をさぼって郊外に出たところ、ちょっと一癖ありそうな女の子(髪が青い)と出会う、というところから始まるのですが、よくみると、女の子はケイト=クレメンタイン。

あれ?
ケイトは別れた恋人役じゃなかったっけ…?とまず疑問にぶち当たる。

なんとなく意気投合して、会ったばかりなのに親密になる二人の前に、なぜか、不安そうに「Can I help you?」という謎めいた男の子が。
どこかでみたことあるな、と思ったら、イライジャ・ウッドだった。

???がついたときにタイトル・クレジットがはじまって、ここで、よくよく考えればいきなり場面転換。
ここでようやく、よくあらすじに書かれている「主人公がケンカした恋人に会いに行くと、なぜか彼女は自分のことを全く知らないう様子で、その後、彼女が自分に関する記憶をすべて消してしまったことを知る…」という流れが始まります。

このことにショックを受けた主人公は、自分も同じように記憶を消すよう、脳医?に依頼。
彼女を忘れるために、彼女との記憶を一切、思い出すという作業が始まるのですが…、ここでのクレメンタインの髪はオレンジ。
アレレ…?と思ううちにいろいろ話は進んでいくし、観ているほうでは、現在から過去にさかのぼって、ジョエルを通してクレメンタインという人を知ることになります。

この辺、書くとわかりにくいですが、「アレレレ?」と思いながら観る人を引っ張っていくところが、いかにも、カウフマンらしい。
観ているときもそうだけど、後々色々考えてしまう映画です。

ところで、記憶を消すというのはいかにも変なヘッドギアをつけて、何かのプログラムでパチパチ記憶を消していくのですが、これが夜に患者が眠ったところを押し入って行うらしい(笑)。
そのために、医師のアシスタントと、そのアシスタントがジョエルの部屋に押し入ってくるのですが、ここで、またアレレ。
一人が、イライジャ・ウッドなんです。アレ?

胡散臭い作業もひと段落、実際には激情?に駆られて施術を依頼したジョエルの深層心理が記憶消去に抵抗して、彼の脳内では記憶のままのクレメンタインではなく、一緒に消されまいとする彼自身の意識のように変化していくのですが、この施術師たちは暇になるのでダべリング。
と、イライジャ君の妙なエピソードがさしはさまれます。

仕事中にクライアントに一目ぼれしたイライジャ君が、彼女とうまくやって付き合う、という話で、よくよく聞くと変態的な話なんですが、観ているときにはあまり気にならなかったけど、実はここに、大事なことが。
イライジャ君の彼女が、青い髪のクレメンタインだったのよね。

で、よくよく考えれば、このイライジャ君の素行も怪しい。
し、なんと、ここで伏兵、キルスティン・ダンスト演じる医者の受付の、重要なもう一本のストーリーが絡んできます。

なんで、主役級の女優がこんなとこにいるんだろう…、と思ったら、終盤どんでん返し、大したキーパーソンだった。
彼女は、医師のアシスタントの恋人、だと思ったら、なんと、医師の不倫相手で、彼女自身が記憶を消した人だったんですよね。
それが、彼女自身の意志か、不倫相手のご都合的考えなのかは、ちょっとよくわかんない。

一方、記憶を消した青い髪のクレメンタインも、どこか精神不安定。
ここでのイライジャ君の振る舞いもヘン…と思ったら、そうか!彼は彼女に一目ぼれして、自分がうまくやるために、過去の記憶のメモから、ジョエルの行為を盗み演じていたんだ!ということがわかる。
だから、彼は彼女にとって特別な存在(恋人)になりそうになったし、同時にクレメンタインを不安定にさせたわけやね。

この辺でようやく、冒頭につながるのですが、冒頭はこういうわけのシーンだったのね。
つまり、クレメンタインとの記憶を抵抗しながらも消されたジョエルが、無意識(潜在意識?)によってまた彼女に出会ってしまう。

と、運命的でロマンチック~!と思うかもしれませんが、さすがカウフマン、そう簡単に都合よく終わらせませんね。

自分の過去を知った現在のキルスティン(役名忘れた)が、すごく現実的な復讐(というか、ある意味本当の意味の前進のために)行動を起こします。
治療のために過去を語ったクレメンタインの、「ジョエルにうんざり」的なテープが届き、新しい恋人がそれをきいて混乱する。
もちろん、ジョエルの「クレメンタインにうんざり」的なテープも二人で聴くことに。

お互い気分を害するけれど、でもよくよく考えれば、忘れるために相手を悪く言うのが治療かもしれないし、付き合っているときは本音を言い合えないからダメになったかもしれない、ということはありますよね。

というところを乗り越えて、ハッピーエンド。
エキセントリックな女の子(そして、本当に二人が出会った頃のクレメンタインの髪の色は黄緑)と、本来合うはずのないどこか煮え切らない男が、ようやく壁を越えて出会う、といったところかね。
いや~、ジャケットとあらすじからは想像もできない展開でした。

それにしても、どちらかというと演技派大女優、という感じのケイトが、こんなフツーの、エキセントリックな女の子を演じられるのですね~。
いろいろと興味深いフィルムでした。