pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

カルロス・アコスタwithボリショイ『スパルタクス』





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GWの北陸はなんとなく混み合っているというイメージで、あんまり行楽のスケジュールがたたないまま連休に突入中。

とりあえず、ビデオでもみるか、といそいそと購入したのがコレ↑

ボリショイの名物『スパルタクス』を実見したのは2002年で、当時はニーナも健在(ただし、彼女は『スパルタクス』のキャストではない模様)、1970年代前半生まれのプリンシパルたちがまだ「若手」で、古き良きソヴィエト・バレエの名残がまだ残っていた時代です。

市場主義の導入がソヴィエト・バレエの良さを喪失したような気がしますが…、これは2008年ころの映像だそう。
このところお家騒動も激しいボリショイにはもはやボリショイの十八番の主演を演じられる男性ソリストがいないような気がしますが…、だからなのか、ボリショイの十八番をロイヤルのアコスタが客演。

キューバ出身のアコスタはプロポーション・テクニックが申し分なく、ロイヤル仕込み?の繊細な表現がうまいと思います。
が、たいていはいい人にみえてしまうので、ちょっぴり癖のある(ワルな)主人公が演じられないのが残念なところ。
そして、日本人ダンサーが王道クラシックの王子を演じると、どうしてもお仕着せ感が付きまとうのと同様のことが、残念ながら彼にもいえます。
というか、私の先入観がどうしてもぬぐえないの。

なので、ダイナミックさがウリの『スパルタクス』は、ボリショイのレパートリーとはいえ、すごくあっているのではないか…と期待大。

音楽は「剣の舞」で有名なハチャトゥリアンによる曲ですが、まったく、今回記憶に残っていないことが判明。
思ったよりずいぶんゆったりとした音楽なので、始まってしばらく、シナリオを思い出すまでなんだか眠くなってしまいます。

男性群舞のどったんばったん、それに耐えられる舞台だけで上演が可能な『スパルタクス』、というイメージがあったので、なんだか意外。
そして近年のボリショイの危機的なところがまさにこの舞台の魅力を半減させているのか、コールドにボリショイらしい勢いが感じられません。
だから、序盤盛り上がりに欠け…。
ブルーレイだから明るすぎるのか…、コントラストが弱く、グリゴローヴィッチらしい、群舞の立体感がまるでみられませんでした。
大丈夫か、ボリショイ…。

奴隷(剣奴)の役作りのためか、アコスタ氏はいつもに増してワイルドに無精ひげはえっぱなし、頭ももじゃもじゃもまま。でびっくりしますが、やはり繊細な動きが得意なので、恋人フリーギア役のニーナ・カプツォーワとの相性が抜群。
二人とも、表現力がとてもスバラシイ。
とにかく、アコスタ氏のリフトがうまいし、それに(かなり複雑なリフトが多い)ちゃんとカプツォーワがあっているのですごい。

2002年公演でも、当時ソリストだったカプツォーワがダブルキャストだったらしいですが、私が観たのはプリンシパルだったアンナ・アントーニチェワのほう。ただし、こちらは手足の強張った感じがつよく、あんまり感情移入できなかった記憶があり、断然、カプツォーワのほうがいい。

一方の悪役カップル、クラッスス&エギナ。
エギナは2002年と同じマリア・アラシュ。ほかの役でみたことがない人ですが、顔やたたずまいはまさに権力者の愛人にぴったりの、きっつーい顔の美人さんです。
とげとげしさ抜群なんですが、ちょっと軸が不安定なところが残念なところ。
そしてクラッスス役のアレクサンドル・ヴォルコフがまだ技術十分でないのか、この二人のリフトはちょっとぎこちなくって、肉と肉がぶつかり合う音が聞こえそうでした。

2002年公演のときはびっくりするほど?オジサンぽいプリンシパルクラッススを演じていたのですが、今思えば、彼の重々しさのほうがずっとクラッススにあっていた。
やはり権力の踊りに重要な重量感が、ヴォルコフには欠けていました。
そして、跳躍力がいまひとつ。なんというか、かつてあったはずの、宙で一回止まっているようにみえる、ボリショイダンサーらしい気取りを帯びたテクニックが…、若い踊り手にみられないのが痛いなぁ。

ただ、かなり複雑な身体の動きが多いので、現代っ子のロシアっ子にはつらい振付だわな…。

権力のいやらしさがない分、今回のクラッススは小心者なのに権力の座についた体制側の人物、という人格にみえ、それがマリア姐さんにいいようにたぶらかされている、という感じで、それはそれでストーリーの新解釈になりましたが。
要するに、いったん捕えたクラッススを高潔な武士のように解放してしまったのがスパルタクスの甘さというか破滅のもと、なんですが、その屈辱に対するクラッススの復讐心はうまく演じられているような気がしました。

それにしても、クラッススの衣装はちょっぴり恥ずかしい。
ローマのせいか、はだし(タイツははいているかもしれませんが)にミニスカ(これは鎧なのだが)なんだもの。

そして、前回もマリア・アラシュは踊る仏像(観音?)にみえたのだけど、どうもあの衣装のカツラ?がそうなのね。
ローマ風、というかギリシアの女神像みたいなイメージのデザインのせいらしいです。
そしてどうでもいいことですが、アラシュ姐さんは美人だけど出っ歯なのか、あまり唇を閉じることがなく、常に白い歯がみえる。ちょっと気になる…

↑2002年はどったんばったんにわくわくしたような気がするのですが…、なんだか消化不良。

 そのせいで、名盤といわれる、ワシリーエフ&ベスメルトノワ&リエパ主演版と、1980年代後半のボリショイスター・ムハメドフ主演版を比較のために追加注文しちゃったよ。
 ムハメドフは「イワン雷帝」の印象から、クラッススのほうがあってるんじゃないか…と思いますが。

 最後になりましたが、先日ボリショイの名プリマ・プリセツカヤ様が亡くなりましたね。
 またひとつ、20世紀が消えましたが…。

 表現力は及びませんが、↑映像のなかのアラシュはちょっぴり、若き日のプリ様をほうふつとさせる容貌だなぁ、と思いました(手足の柔らかさは、全然、ですがね)。