pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

古い映画のすゝめ。

 
最近、映画づいています。
 
東京へ行ったとき、シャンテシネマでやっていた「偽りの人生」、うっかり見逃したらなんと県内の寂れた郊外の映画館でやっており、頑張って観ましたが…、こちらは外れ。
なぜか見てしまうヴィーゴ・モーテンセンですが、彼がでていても詰まんないフィルムというのがあるのですねぇ。
(※かなりおじさんです)
ただ、ブエノスアイレスの都会風景と、打って変わってのアルゼンチンの沼沢地帯の風景がみもの。
大陸は奥深い…。
(※ヴィーゴの北欧的容貌がアルゼンチンに合わないという人もいましたが、なんといっても南米は移民の国だよ)
 
そして、このところなぜかGyao!では古い映画をやっていて、いくつかタイトルだけを知っていたのをこの際実見。
 
まずは『ボッカチオ’70』。
’70なんていうから1970年の映画かと思ったら、製作が1962年のイタリア映画。
豪華女優と豪華監督のタッグがこの時代のイタリア映画ならではですが、その黄金期のオムニバス映画。一話40分程度ですが、計4話なので、ぶっとおしでみるには3時間以上かかり、一話ずつちまちま観ました。
 
一話目の『レンツォとルチアーナ』は、監督が一番無名なせいか、公開時はイタリア国外ではカットされていたとか。
でもなかなかコミカルでかわいいお話です。
社内結婚禁止(そして女子社員は結婚退社を強要)のビスケット会社に勤める若いカップルが、こっそりどたばたと結婚するも、貧乏ゆえに都会の小さなアパートで嫁の大家族と同居、なかなか二人っきりにもなれずイライラ。
↑狭いところにぎゅうぎゅう住んでいるイタリア人の家族は古い映画に結構出てくる光景で、工場の圧倒的な数の労働者や、イモ洗い状態のプール、鮨詰めの映画館なども、戦後復興期のイタリアらしく、なぜかおかしい。
何のオチもない話ですが、女の子がキュート(貧乏なはずなのに、すごくおしゃれで生活感がない)で、「将来のために頑張る」といいきる、生きることに一途なのに励まされます。
 
2話は冒頭からフェリーニ調をブッ飛ばしてきます。
「聖アントニウスの誘惑」にかけていると思われる『アントニオ博士の誘惑』。
男女観について保守的なアントニオ氏の家の前の広場に、胸元をあらわにした扇情的な看板(※なぜか牛乳の広告。アメリカの広告のパロディーか?)が建てられてしまい、あらゆる方面に抗議するアントニオ氏。
そのうち女の幻覚をみるようになり、すっかり憑りつかれてしまう…、という話。
レトロな特撮と、どこか人を喰ったようなところがいかにもフェリーニらしい。
怒り狂う博士と、対照的に鼻をのばしている市井の人々の表情がコミカル。
それにしても、FF氏は女嫌いなのかなぁ…。
 
3話はミラノの貴族、というだけですでにヴィスコンティ臭が。
財産もちのスイス貴族の娘結婚したミラノの伯爵、というところに北イタリアの国境の歴史を感じますが、それはさておき。
ロミー・シュナイダーてこんな女優さんだったのねぇ。
意外と小柄で、平目気味だし、整った美人、というのではないけれど、何かが印象に残る。
売春スキャンダルを新聞にスクープされた伯爵と、火消しに躍起になる顧問弁護士たちをよそに、何か策ありげな奥様。その父はスキャンダルにカンカンで、夫婦への送金を停止・離婚させようとするところ、娘はひとまずそれをやめさせる。
夫に娼婦に払ったお金を自分に払えば節約になるのに…、といい、自分に色仕掛け?をかける夫にお金を要求。
娼婦に会う時のように、うきうきと小切手を用意し、バラの花を手に寝室に戻ってくる伯爵。
…何となく、奥様のほうは本当は夫を愛してるんだろうなぁ、と思わせる言動がちらちら。
どこか虚しさを抱えた、ロミー・シュナイダーの表情が印象的です。
ほかのヴィスコンティの作品に比べ、軽妙な感じもありますが、それでもタイトルが『仕事中』(※娼婦の仕事中)、というのがいかにもシニカルなヴィスコンティ調。
 
4話目は監督よりも、ソフィア・ローレンが圧巻。
お祭りの日の市場のやみくじで、当選者が美女と一夜を過ごせるというので、そこらじゅうの男たちが盛り上がる。
みんな「お相手」を一目見ようと、昼間の的あての屋台に押しかけるが、当の女・ゾエ(=ソフィア)はうんざり。
(※全く同感。倫理的問題は別として、当たってもいないのに「オレものの」的な視線をおくる男たちはいったい何様よ)
広場で暴れだした雄牛に襲われそうになった時、カウボーイが牛をうまく手なずけて危機を回避しますが、この若者とゾエがいい感じに。夜もデートのお誘いが来ますが、客引きの男にうながされ、しぶしぶ二人は別れます。
これまで、肉感的なのは別として、きつい目と四角い顔があまり美人はみえなかったソフィア・ローレンも、意気のいい姐さんっぷりがかわいくみえました。
そして、当選者が村一?さえない寺男だったことが判明、外れた男たちが当たりくじを買収しようとあの手この手で迫ったり、トレーラーの運転席にこっそり忍び込んだカウボーイが二人を乗せたまま車で暴走するのを村中の男たち(※子供まで)が追いかけていったりと、イタリアらしいドタバタ劇が全開に。
最後はドン・キホーテ(※バレエの)みたいなハッピーエンドで終わります。
ちなみに、タイトルは『くじ引き』。
 
 
…とまあ、単純明快オムニバスですが、それがなかなかかえって痛快。
古い映画ですが、古さはあまり気にならず、古き良きエッセンスがギュッとつまったような、映画らしい楽しさが○。