pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

小早川秋聲について。

東京ステーションギャラリーで小早川秋聲展を見ました。

 

実際に見る前、小早川秋聲は有名な《國之盾》と、どうやら他の明治期風俗画家の記憶がごっちゃになっていたみたいで・・・、実は《國之盾》しか知らなかった画家でした。

 

なので、統一イメージがなかったわけですが、見終わった後も、なんというか、統一イメージが出しにくい作家だなぁ、と思いました。

実際、文展のそれなりの画家だった(らしい)のですが、1995年頃の戦争美術再評価の高まり期まで忘れられた画家だったそうな。

なんというか、あんまり師弟関係から読み解けない。

 

ただ、展覧会は見応えがあり、面白かったです。しかしまあ、振り幅もすごい(笑)。

 

人物描写とか、着彩とか、どうかすると「下手なのか?」と思うこともありますが、これまたどうかするとピッタリはまって、ものすごく「いい」絵だったりして・・・、評価しにくい画家だったんだろうな…とも。

 

《國之盾》で知られるくらいだから従軍画家なんですけれども、なんというか、初期(といっても30代くらいだからそこそこ中年)の作品を見ていると、なるほど、この人は生来のジャーナリスティックな眼の持ち主なんだな〜という気がしました。

 

あまり関係ないかもしれませんが、谷口香嶠の後に山元春挙に師事したそうで、春挙といえば円山派らしいツマンナイ雪松図なんかも描いたりするんだけど、写真を山水画にいち早く取り入れた人でもあり、その鮮烈な影響があったのかなぁ、とも思います。

 

そして、この時代の日本画家にしては珍しく(そして公職もなさそうなのに)、明治末〜大正期にかけてものすごい広い範囲で海外遊学してるなー、と思ったら、比較的裕福な家系らしい。

だから、あんまり画壇のしがらみもなかったのかもしれませんねえ。

ものすごい自由な描写が楽しい紀行画は見もの。そして、偏見かもしれませんが、裕福だからか(笑)、作品によってはものすごく砂子づかいが繊細で緻密で綺麗なんですよ。

 

実際には思ったほど《国之盾》には心は動かなかったのですが、それ以外の戦争画は、情景画、ヒューマニズム、リアリスムそれぞれの観点で沁みる作品が多く…。

 

図録も買いましたが、やはり実物の再現には印刷では限界があり、ぜひ、実物をご覧あれ。