pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

モーリス・ベジャール・バレエ団2021公演

コロナ禍、舞台に立つ仕事の人はいかに困難だろうなぁ、と思う日々。

バレエ公演は無論、海外のバレエ団を見ることもまだまだ先だろうな…、と思っていたところ。

 

偶然、モーリス・ベジャール・バレエ団の来日公演を知りました。公演から約2週間前の話。

 

丁度、10月10日までで終わってしまう、写真美術館での山城知佳子展を見に行くタイミングを測っていたので、かつ、全幕ものの「バレエ・フォー・ライフ」は昔ですが見たことがあるので、3演目ボレロ公演の方へ行ってきました。

 

さて。

 

ボレロのキャストが直前まで発表されなかったので、選択肢がなかったのですが、結果として、エリザベット・ロス様のメロディの日になりました。

 

ボレロの実見は3人目のダンサー、でも男性のメロディを実見したことがなかったので、どちらかというとジュリアン・ファブロー(呼び捨て)を見たかったなぁ…。

 

まず最初、ジル・ロマンの「人はいつでも夢想する」。

ジルの振り付けは「アリア」から2回目。

 

…結論からいって、ジルは私と合わないかも。

「アリア」もそうだったのですが、ジルがその振り付けで「何を」したいのかがわからない。

ベジャールと同じく、「音楽に振りを」と語っておられますが、ジルには構成が感じられない。

そのようなものを意識しておらず、むしろアンチ文脈の前衛派なのかも知れないが…。分かり合えるところがないので、なかなかにきつい1時間に。

 

ちなみに、すっかり世代がわりしていて相変わらずダンサーがよくわからないのだけれど、個人的にはルロイ・モクハトレという南アフリカ出身の男性ダンサーが良かったと思います。

 

小柄なため、ほかの演目では女性とのペアがかなり不利に見えましたが、「人は…」では男性同士のパドドゥがあり、その身体の柔らかさが中性的で、なんとも魅力的。

この人を生かす振り(演目)があればいいなぁ、と夢想(笑)。

 

一方、ベジャールの「ブレルとバルバラ」は、全く歌詞がわからないシャンソンではあるけれど、音楽と振り、構成から、ベジャールの歌手と音楽との解釈とリスペクトがわかるから面白い。

 

ギエム姐さんが引退した(先日、ダニール・シムキンがインタヴュアーを務めた姐さんの近影動画を見ました。興味深いです)昨今、私的に最後のミューズ・ロス様は、1997年にベジャール・バレエ入団で、意外とベジャールと共にした時間は短いのかもしれないけれど、ベジャールの晩年の作品には欠かせない女優性を感じるのだよなぁ…。

 

また再会できて、ほんと、夢のようです。

 

それにしても、3時間近い幕の全演目にロス様はご出演なされていて、お、お疲れが出ませんように…。

 

さて、トリの「ボレロ

ロス様のメロディは以前映像でも見たことがあって、なんというか、あまりにも中性的・無感情的でかえって神々しい様が実はあんまり…と思ったことがあったのですが、東京バレエではなく多国籍からなるリズムとの響き合いを楽しみにしていました。

 

しかし…。

今回はライティングがあまり上手くなかったのかな…。

冒頭が手首のみ照らす、というのがお決まりのパターンですが、それにしても全体がうっすら見える明るさで、劇的度合いが減少。

なんだかね。

 

そしてね。やはりロス様のメロディは淡々持ち味で、かつ、今まで実見してきたダンサーが長髪だったのに対し、短髪のロス様には、盛り上がり時の激情の演出性が薄く…。

「動」の楽しみとしては、7月に見た上野水香さんの方があって、また、同カンパニーのリズムたちとの響き合いもあまり感じられなく。

 

ロス様の淡々具合は超人的、その個性としては興味深いけど、心動く度合いは今回ちょっと少なく、それが残念。

 

…とまあ、こんな感じの感想を書いていますが、とにかく、今、舞台を見られたことは本当に感動的。

感謝してマウス。