pico_usagi’s blog

つれづれ鑑賞記を引っ越し作業中です!

ボレロのこと。

コロナ禍の厳しき産業(B系)に従事しておりますが、舞台の人は本当にご苦労、だと思います。

 

私も昨年のパリ・オペラ座の公演を最後に、ほぼ皆無の観劇状況。

オリンピック効果で名だたる海外バレエ団の日本公演が予定されていた昨年の状況は一気に鎮静化して、いつまたあの引っ越し大公演がみられるのか、全くこの先の見通しはわからないですね。

 

そんな中、県内の劇場が何件かダンス公演を再開したことがわかり、東京バレエ団の巡業公演へ行ってきました。

その名も「ホープジャパン」。

 

ホープ…」といえばちょうど十年(正確には9年)のギエム姐さんの東日本大震災後の慰問大ツアーと同じ題目ですよ。

 

2012年の公演も観ており、このブログのどこかに眠っているはずですが、ちょうど一度ボレロを封印したギエム様が、被災者を勇気づけるためにその封印を解いた、とか何かが売り文句でしたが、その言葉通り、本当に「神の如く」の公演だったことを覚えています。

 

それをまあ、ツアー名もさることながら、同じ「ボレロ」をぶつけてきた東京バレエ団、というか上野水香の豪胆さには全く、唖然、ですが、本当に貴重になった機会ですから、行くことにしました。

 

結論。すごくよかったです。

 

演目の「ギリシャの踊り」は、別に思うところあり、またの機会に書くとして、「パキータ」は演目自体がなんだかな、というものですが、主役の宮川新大というダンサーは東京バレエ団男子にしては珍しく(失礼!)クラシックの軸がまっすぐ綺麗で柔らかくて、全幕者で見たいなー、と思いました。

 

とまれ、上野水香の「ボレロ」。

 

この人に対する懐疑的な思いは以前書いたのですが、ボレロで見れてよかったなーと思える内容。

メロディとリズムの調和も、さすが同じ(※上野さんは元々は牧阿佐美バレヱ団出身ですが)カンパニー、という感じですが、メロディにあるべき支配力、なのに「無」の感じ、のための身体能力・円熟と、バレエに生きる人たちの熱量がちょうどの感じで、まさに今しか見られない、という迫力のある舞台でした。

 

それにしても、ベジャールの「ボレロ」は、今まで実見したのがギエムのみ、ほか、映像で見たのがプリセツカヤ様、マリシア・ハイデ(呼び捨て)、エリザベット・ロス様と、ジュリアン・ファブロー、ジョルジュ・ドンなのですが、男性陣は知らんが(もともと、メロディは女性巫女)、女性陣は何故か40〜50代で踊っているのを見ることが多く、一般に言えばダンサーの身体的ピークを超えている年代なのですが、この方がかえって、その円熟の凄みを味わえるような気がする。

 

上野水香も、手足が非常に長く、身体性にも優れ、というのは昔からだったのだけれど、今ひとつ感動味に欠けるダンサーだなぁ、と思っていたのですが、40代という、ダンサーとしてはもう若くない時期にさしかかって、その表現の円熟がみられ、これからも頑張ってほしいなぁ、と思った次第。