ビデオで見て以来、長年鑑賞がかなわなかった、1991年上演のマカロワ版『ラ・バヤデール』。
中古のDVDが安く手にはいったので、ようやく再見が叶いました。
結論から言って、映像記録のあるバヤデールでは名盤。
配役は今や再現不可能なゴージャス・メンバー。
ニキヤ役のアシィルムラートワは、現役時代を全く知りませんが、マリインスキーのプリンシパル。
エキゾチックなバヤデールを、厳かに演じつつ、完璧なテクニックを披露してくださいます。
今までみたかなでもっともニキヤっぽい。
これまた完璧なボリショイ・プリンシパル出身で、ロイヤルへ移籍してもそのテクニックは健在。
(ただし、グリゴローヴィチの振付にみられた変態性が薄まってて、ちと控えめな印象)
そして、意外と高僧役のアンソニー・ダウエルがいい感じ。
まだまだ色気がある(昔のプリンスです)し、横恋慕しているダメ坊主っぷりもいい。
あらためてみると、マカロワ版の展開はテンポが早くって、演技も無駄がなく(説明臭いという見方もできるけど)サクサクみられるのよね。
そして、ガムザッティがダーシー・バッセル様。
マリインスキーのバヤデールでは中途半端な出番しかないガムザッティも、マカロワ版では最後まで見せ場がある、プリンシパルにふさわしい役ですね。
ちなみに、キャラクターダンスとして有名なブロンズ・アイドルは、20歳そこそこの熊川哲也氏が踊ってます。
久しぶりにみると、あられもないくらい金ピカで、ほぼ原型?不詳。(笑)
映像の編集も、キーの人物を丁寧に追ったカタチになっており、すべての因果関係(誰がニキヤを殺したか、とか)も、すべて視線で追えるようになっています。
なので、高僧から渡された解毒剤を手にしつつ、ニキヤがみたのはガムザッティの手をとって去ろうとしたソロル、というのがニキヤ視線で見ることができ、あ〜あ、という感じがまざまざとわかります。(笑)
それにしても、今回はむしろ第二幕の「影の王国」の必要性が今ひとつわからない結果に。
失意(とはいえ、自業自得)の中、阿片を吸ったソロルの幻影というか願望?、というのはわかるけど、1幕、3幕のドラマの緊張感に比べ、なんとも間延びしてるのよね。
この「影の王国」は、ジゼルの第二幕に似ているのだけれど、ジゼルは必然として、これはなんで必要なのかな…。
ロイヤルのコールドは、当時もいまも、パッとしないし、なあ。
しかし、今回思ったのは、ソロルとニキヤを結ぶ白いベール。
これは二人の永遠の愛の象徴、というふうにいわれているけど…、ドラマチックな三幕を観た後では、ソロルをあの世へ呼び込んだニキヤの執念(恨み)のように…みえました。
…怖い。